呼吸
夜寝る前に何気なく意識した呼吸。
風邪を引いていて鼻が詰まっている訳でもないのに、フト息苦しさを感じた。
吸って、吐いて、吸って。
意識して呼吸をしていくうちに息苦しさは消えたのだが、頭の中でズット吸って、吐いて、吸って、吐いて。と繰り返しているうちに、止め時が分からなくなってしまった。
何も考えないように時計の秒針の音に意識を集中させると、また苦しくなって来る。
意識をしなければ呼吸が出来なくなっていたのだ。
呼吸が、普段無意識にしているとは思えないほどの重労働に感じて、思い切って呼吸する事を止めてみた。
頭の中では緊急を知らせるアラームのように吸って、吐いて、吸って、吐いてと繰り返しているが。知った事ではない。
「プハッ」
限界が来て、勝手に体が息継ぎをすると、少しの間はゼーぜーと無意識に呼吸が出来た。しかし、息苦しさが治まってくると、また無意識では呼吸が出来なくなってくる。
これはなんだ?
眠い。
意識して呼吸をし続けている限りは眠れそうにない。
疲れた。
一旦寝てしまえば、明日には治っているだろう。だったら、眠る事を第一に考えなくては!
テレビをつける?いや、親父と母に怒られてしまう。
歌を歌う?言語道断だ。
口パク?よし、それでいってみよう。
こうして口パクで熱唱する校歌。長く息を吐くため、かなりスローテンポの校歌!
呼吸は、吸うよりも吐く方が心地良いな。
そんな訳の分からない結論に達しながら、徐々に睡魔に襲われ、俺は息を細く、長く吐き続けながら眠る事が出来た。
今でも時々、何かに集中し過ぎていると呼吸を忘れ、延々と息を吐き続けてしまう。




