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SHORTで、俺。  作者: SIN
小学校 中学年

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72/485

感じ悪い

 目が悪いからなのかなんなのか、俺は姉や弟よりも良く聞こえた。

 耳が良いのか、単純に気にし過ぎているだけなのかは分からないが、外から帰って来る足音が聞こえるし、いつもと違う音がすると部屋中を調べてみるとコタツが付きっぱなしになっていたし、テレビを付けた時のキュゥイィィィンと言う音も聞こえるし、ニュースキャスターが喋る度に「ペチャ、シチャ」と鳴らす音が気になって、気になって。

 そんな俺の両親は、クチャラーの分類に入る。

 親父も母も歯が悪かったので、食べている最中に「チュッ」と舌打ちのような音をたてるのだ。そこまでなら誰だって「五月蝿いな」と不快になるのだろうが、聞こえてしまう俺は、ひと噛みひと噛み毎に発せられる「ポリポリ」「クチャクチャ」まで気になっていた。噛む時、上の歯と下の歯が当たる「コン」と言う音まで。

 食卓を囲む事が極端に少なかったとは言え、どうしても食べる音を聞かなければならない時間があった。

 それは、晩酌時。

 ビールのつまみにはスルメとか、ピーナッツとか、良く噛んで食べる物が多かったので、延々と「グチャグチャ」「チュッ」「ゴクゴク」と聞こえて来る。

 そんな時はヘッドフォン。

 好きな音楽を、周りの音が聞こえない程度の音量で聞く。しかし、毎日そう出来る訳ではなく、時々姉が「貸して」とヘッドフォンを持って行ってしまう。

 その日、ヘッドフォンもなにもない俺は布団を敷いて寝る事にした。

 眠ろうと言う意思を見せる事で晩酌がお開きになれば……そんな期待をしたが、お開きにはまだ早い時間だったため、晩酌は続けられた。

 寝転んで目を閉じると、より一層気になる音。

 しかし、五月蝿いなんて声に出せる訳でもなく、布団を頭から被る。だが、それでも聞こえて来る。なんなら「わざと音を立てて食べ始めた?」と思えるほど鮮明に。

 仕方なく、俺はソッと手で耳を塞いだ。

 勿論大々的にではなく、布団を被ったまま。

 真横で晩酌をしている家族には俺が耳を塞いでいるなんて気付かれていないと、思っていた。

 だが、それは違っていた。

 「お前感じ悪いな!」

 ドカッ!

 この話しをつい最近思い出した俺は、自分の事だとは言わずに話してみた。

 「食べ方って言うか、食べる音が五月蝿い人っておるやん?」

 「うん」

 「面と向かって五月蝿いって言い難いやろ?」

 「まぁ、うん」

 「やからって布団被って耳塞ぎだしたら如何思う?」

 「そりゃー、感じ悪いわ」

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