脱衣
服を脱いで風呂場に入ると、どう言う訳かズボンを脱ぎ忘れている事に気が付いた。だからそのままズボンを脱げば良いだけなのに、何故だろう、やり直しだ。と全ての服を着込んで、もう1度初めから服を脱ぎ始める。
よし、ズボンはちゃんと脱いだ。そう確認して風呂場に入ると、今度は靴下を履いたままだった。
もう1回。
風呂場から出て、服を着込んで、1から脱ぐ。
靴下も、ズボンも脱いだ。そう確認してから風呂場に入って、シャツの脱ぎ忘れに気が付く。
このまま風呂に入ってしまおうか?
そう諦めて洗面器を手に持つが、きっと怒られるのだろうと風呂場を出て、また着込んでやり直す。
いつになったら風呂に入れるんだろう?
そう考えながらだったのが災いしたのだろう、また靴下を脱ぎ忘れてしまった。
次こそは!
気合を入れて風呂場を出て、服を着込んで。
次こそは絶対に、絶対に全部脱ぐんだ!シャツも、ズボンも絶対に脱ぎ忘れないぞ!
モソモソ。
あれ、なんか急に脱ぎにくい……。
ゴソゴソ。
よし、ズボンが脱げた。次はシャツ……あれ、ボタンなんかついてたっけ?
「なにやってるん」
横から声をかけられ、目を開けると、親父がいた。
「あれ?」
状況がスグには飲み込めずに周囲を確認すると、俺は布団の中にいて、抜いたズボンを親父の方に投げ飛ばし、そして今はパジャマのボタンを外している最中。
お風呂に入る夢を見て、寝惚けて脱衣していた訳だ。
余りにも恥ずかしかったので、
「暑かっただけ!」
と言って頭まで布団を被って誤魔化したのだが、親父は翌朝、家族全員に笑い話として披露していた。




