何色が好き?
何色が好き?
ランドセルの色が赤か黒しかなかった時代、女の子は赤やピンク、男の子は青か黒と言うのが何故か自然と身についていた。
極度に人の顔色を伺う癖を持っていた俺は、当然この質問に青と答えていた。
青は好きな色ではあったから嘘ではないが、それよりも好きな色があって、それがよりによってピンク色。
余りにも女の子の色としてのイメージが強かった為に、ピンク色が好きな自分はもしかしたら人間としてどこか可笑しいのではないだろうか?と、そこまで深く考えていた。
「何色が好き?」
幼稚園に入る少し前、近所に住んでいた子供、と言っても当時の俺からすれば随分年上である小学生男子がそう聞いてきた。
その時俺の隣には母がいたので、また青色と答えようとした。しかし小学生男子は即答出来なかった俺に続けて、
「なに組になれたら嬉しい?」
と、聞いてきた。
幼稚園は花の名前で組分けがあり、その花に因んだ色の帽子や名札になるらしく、小学生男子は何色が好きか?と言う質問を組に例えて質問し直したのだ。
「桃色」
俺の答えに大笑いする母は、
「そんなクラスある訳ないやろ」
と、散々馬鹿にしてきたが、その年に入園した俺の組は「サクラ組」だった。