似顔絵
1、2年の担任だった先生が他の学校に行く事が決まった。
生徒達をモデルに絵を書いていた先生は、児童の中ではかなり人気があって、他の学校へ行く、と知らされた時に泣き出す子もいた程だった。
こうして刻一刻とお別れの日は近付いていく中、担任は休み時間のちょっとした時間に生徒を1人ずつ呼び出し、色紙に似顔絵を描き始めた。
1人1枚の似顔絵。
席の順番に呼ばれていたので、俺はかなり最後の方だった。
1人にかかる時間は大体1日。ジッとしている優秀な児童の場合は1日かからなかったと思う。
そんな中、俺は驚愕の3日。
ジッとしていたつもりなのだが、呼び出す度にポーズが変わっていると言われ、最終的には、
「うん。他の子先に描くわ」
1番最後に回されてしまった。
そこから1週間程経った頃だろうか、休憩時間でも、HR始まるまでのちょっとした空き時間でも、昼休みでもなく、放課後に呼び出された。
同じポーズが取れない俺対策として担任は、描きあがるまで帰らせない!を実行したのだ。
「そのまま!そのまま~」
担任は描きながらズット俺にそう声をかけ続けてきたのだが、不意に消しゴムを持って半分以上を消してしまった。
また動いてしまったのだろうか?
いつ帰れるんだろうか。
途方に暮れつつ消しゴムを動かす担任をぼんやりと眺めていると、不意に動きがピタリと止まり、俺を見て。
「そのまま!」
今まで苦戦していたのが嘘のようにサラサラと絵を描く担任は、1時間もしないうちに描き終えた。
今でも残っているその似顔絵の俺は、暇そうに頬杖をついている。




