忍者
2階の親父達の部屋には1枚の賞状が額縁に入れて飾ってある。
それは姉の習字大会か何かの賞状で、優秀賞と書かれている。
姉の字がかなり綺麗なのは小さい頃から習字を習っていたからで、計算が速いのはそろばんを習っていたから、頭が良いのも教材を買っていたからだ。
初めの子やからしっかり育てなアカン。と言う親父の気合を感じる。
そして2番目の子供である俺は、姉の教材のお下がりをもらう、と言う事もなく、自由に育てられた。
習い事をしろと言われた事もなければ、何かを始めたいと申し出た事もない。
若干放置気味に育てられ、それはそれは伸び伸びとー…育つ訳もなく、俺は随分と必死な子供になった。
何をすれば親は俺を見るか。
そう考えながら過ごしつつ、母の逆鱗にも触れない程度にする必要もあり、人の顔色ばかりを気にしながらタイミングを計らうモノだから目付きが悪いと結局怒られ、そして徐々に何もしない方が怒られない事に気付き、今度は如何に目立たないかを追及した。
どこに立てば邪魔にならないか、どこにいれば死角になるのか。
足音を立てないで歩く練習もかなりやった。
こうして学校で付けられたあだ名は、忍者だった。




