逆上がり
何処の学校にも、だいたいはあるだろう鉄棒。
小学校の鉄棒は、1番右側にだけ足場となる板がたっていた。それは逆上がりを練習するための足場なのだが、俺はその板を使っても1度たりとも逆上がりを成功させた事はない。低学年の間とか、小学生の間とかではなく、生まれてから今日まで1度も逆上がりを成功させた事がない。
前回りや後ろ回り、椅子回り、足掛け回りと結構色々出来たのだが、逆上がりだけは駄目だった。練習して出来なかったとかでもなく、練習すら出来ないほど駄目だった。
体育の授業で「出来るまで居残り」と言われ、本当に居残りさせられた位だ。
練習用の板がある鉄棒の前に立たされ、後ろから先生が「大丈夫、出来る」と声をかけてくるのだが、その練習用の板が既に恐怖の対象だったので、鉄棒を握り締めたまま硬直してしまい、1歩も動く事が出来なくなった。
入学したての昼休み、まだ逆上がりと言う技がある事も知らなかった俺は、鉄棒近くをウロウロと散歩していた。
そこへ高学年の男子がきて、逆上がりをしようと板を思いっきり蹴った。しかしその瞬間板が大破し、男子は頭から地面に落下して号泣する、と言うのを目の前で見せられた事があった。
成功するイメージをすれば良いと先生に励まされれば励まされる程その光景が脳裏を駆け巡るので、とてもじゃないが逆上がりをすると言う気分にはなれなかったのだ。




