道路を眺める
家の傍には大通りがあり、バス停がある。
そのバス停は、2階の窓から見える場所にある。
働きに行っていた祖母が帰って来る時間になると窓から外を眺め、バスが止まる度に祖母の姿を探した。
祖母を見付けてもそのまま窓から道路を眺めているだけだったのだが、意味もなく眺めていた訳ではない。
祖母が帰って来てからバイクが10台通っても親父が帰って来なかったら迎えに行こうとか、バイク10台通るまでにトラックが3台通ったら弟も連れて行くとか、黒い車が何台通ったらコレとか。
ボンヤリと外を眺めているように見えて、頭の中はかなり忙しくしていた。
そのせいで母に喋りかけられても生返事しか返せないし、ご飯が出来たと言われても決着が付くまでは窓から離れなかった。
その結果、母は俺が外を眺めていると速やかに窓を閉めてくるようになった。すると、やる事は1つしかない。
道路の脇に立って車を数えるようになった。勿論祖母がバスから降りてきた所からカウントが始まるので、
「迎えに来たん?」
と言う祖母の言葉にすら生返事だ。
そんな俺を真似たのか、いつしか弟も一緒になって道路を眺めるようになった。しかもどんな遊びをしているのかと教えた訳でもないのに、似たような事をしているようだった。ただ、弟の場合は、
「軽が5台通ったらお家に帰る」
とか、
「ワンボックスカーが5台通ったら公園に行く」
と、レベルは高かった。




