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SHORTで、俺。  作者: SIN
ニート

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484/485

「SIN」

 ネットのケーブル工事費が無料だというので申し込む事にした。

 無料なので黙って申し込もうかとも思ったが、場合によっては壁にボールペンほどの穴を開ける事がある。と説明書きがあったので、俺は親父がお酒を飲む前に話をした。

 その結果は意外にも即OKで、寧ろなんで駄目だと思ったのか?と尋ねられるほど。

 なので、なんの心配もなく申し込む事にしたのだが、申し込みを誰の名義にするのか?で少しの家族会議が開かれた。

 俺は家事手伝いなので収入が全くない。

 弟はパソコンに全く興味を示さない。

 そして親父も仕事でパソコンを使う事があるものの「パソコンって何が出来るん?」とか言ってくる程興味がない。

 それでも収入がある人物名義にするのが良いだろうとの事で、親父の名前で申し込む事に決まった。

 翌日、俺は早速親父の名前で申し込んだのだが……その日の夜、少しばかりお酒を飲んだ親父が少々激しめにノックをしてきた。

 「なに?」

 なんとなく嫌な予感がしたので部屋からは出ず、顔だけをドアの隙間から出して返事をした。

 「やっぱりなぁ、お前の名前でやれや」

 「え?もう申し込んだで」

 「電話せぇ!名義変更してもらえ」

 翌日、名義変更をする為に電話をかけ、念の為に無職でも契約できるのかどうかを尋ねてみた。答えは、出来ますよ。との事で、改めて名義変更してくれるようにと頼んだのだが、名義変更には前契約者も電話口に出る必要があると断られてしまった。

 しかし、申し込みを親父の名前でしただけで、契約書類はまだ届いていない。なので実質“前契約者”などは存在していない。

 と伝えたのだが、

 「えーっと……じゃあ、契約破棄という形でよろしいですか?」

 とか言うのだ。

 いやいや、だからまだ契約書類が届いていないのに、何故契約した事になるんだ?もしかして申し込んだ時点で仮契約なのだから、仮であろうとも契約は契約なのか?

 そんな馬鹿な!

 2年以内の解約には3万円ほどのお金がかかる。

 それでも工事費は無料だし、ネットカフェに行く事を考えれば安いもんだ。

 そうだ、家がオンラインになれば毎日ネットカフェに行っているようなものじゃないか。しかも24時間。

 初期費用だと思って3万、納得はいかないけど仕方ないか。

 「じゃあ、自分の名前でもう1度申し込みます」

 「はい。少々お待ちください」

 保留曲を丸々1曲聴き終わり、それから更にしばらく待った。

 途中、忘れられたのだろうか?なんて不安になりつつ大人しく待っていると、

 「お待たせいたしました」

 と、さっきとは全く違う声が聞こえてきた。

 これはまた経緯の説明が必要になる感じだろうか?

 「えっと、昨日に父の名前で申し込んだのですが、やっぱり自分で契約しようと思いまして、その名義変更をー……」

 「えっと、木場様ですよね?木場オヤジ様。でー……」

 「自分はSINです。父と同居しているので、住所とかはそのままでー……」

 「えーっとです、ね……木場様、契約はーされてーない、ですね」

 なにやら調べながら喋っているのか、妙な間延びがあった。

 「はい。申し込んだのが昨日で、まだ書類とかは届いてないです」

 「あ、そうなんですね!ではSIN様のお名前でもう1度書類を郵送しますね」

 うん?

 「え?契約解除金とかは?」

 「契約はまだされておりませんので、解除金とかはないですよ。えっと、先にお父様のお名前で書類が届くと思いますが、それは破棄してもらってかまいません。SIN様のお名前で書類をお送りしますから、それでお願いします」

 おぉ!

 「はい、分かりました。ありがとうございます」

 申し込みをするだけでこれだけグダグダしたにも関わらず、その後も家の近くに電柱がない事や、道路にある電柱から直接家まで線を引くには途中にあるコインパーキングの上を通るから、コインパーキングの土地の持ち主に許可を貰う必要があったり、工事をするにあたり隣近所の許可が必要だったりと結構ごたつき、実際工事が行われたのは結構な時間が経ってからになった。

 こうしてネット回線が自分のパソコンに備わりオンライン表示になったのだが……始めの頃はウイルスを恐れるがあまり、インターネットを使わない時はルーター電源を切る程のチキンっぷりだった。

 少しインターネットのある暮らしに慣れた頃「小説家になろう」を知り、なんとなく登録しようと思った。

 さて、ユーザー名をどうしようか?

 元々は「ジン」から「しん」になったが……「しん」って名前の人滅茶苦茶いっぱいいるな……。

 だったら他に名前を考えよう。

 あぁ、これだ。これしかない。

 「SIN」

 俺は紛うことなき罪人。

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