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SHORTで、俺。  作者: SIN
ニート

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フワッと収束

 ヨッシーをシマ家の路地裏で見かけて以降、俺はまた先輩の部屋を溜り場として使うようになった。

 再び頼まれるようになった掃除。

 それで手に入れたお金でネットカフェに行く。

 チャットをしたり、オンラインゲームをしたり。そこで1人の女性と出会った。もちろん、SNS上でだ。

 退出時間がくるまで喋り、時には先輩の部屋にあったノートパソコンをトイレに持ち込んでやり取りをしていた。

 始めは他愛ない話ばかりをしていたが、出会ってから1年も過ぎてくると深い話をするようにもなり、終に俺は溜り場での扱いや元恋人がストーカーじみている事などを相談するように。

 女性はヨッシーをとことん無視するようにと言っていた。

 雨が降っている日、傘を持っていなかったヨッシーに傘を貸した。と報告した時はかなり怒られたものだ。

 完全に無視すると、次になにをして来るか分からない。そんな不安を伝えると、女性はいつも自信たっぷりに、

 「その時は通報!」

 と、言った。

 元恋人だし、今も顔見知りだから通報までは……と思っていたが、確かに迷惑行為を受けたのなら通報するのが1番の解決なのかも知れない。

 だったら、何かされた時には証拠になるよう映像か音声を残すようにしよう。確かビデオカメラがあった筈。

 こうして俺はヨッシーを完全に無視し始めた。視界にすら入れない徹底振り。

 目の前に立たれて、

 「こんばんは」

 とか言われても返事はしなかった。

 そして女性はもう1つ俺に助言をした。

 「保護者(シマの事)の所に帰りなさい」

 シマの事を“オカンみたいな友人”と説明してから、女性はシマを保護者と呼ぶようになっていた。

 「今は何処?ネカフェ?」

 「先輩の所。ノートパソコン持ってトイレん中」

 「今すぐ保護者にメールしてみたら?」

 今すぐ!?

 内容までは覚えていないがメールして、それから1時間も経たない内に返事が来て、何度かメールのやり取りをしているうち、

 「今から会おう」

 と。

 今から!?

 「なんか、今から会おうって言われてる」

 女性に報告すると、

 「早く行き。どうなったかまた教えて」

 そう言い残してログアウトしてしまった。

 こうなると行くしかなくなり、寒い中を待ち合わせ場所の駅前に向かって走った。

 寒い日の夜の、屋外にあるベンチ。そこに座っている人影がユラリと揺れて手が上がる。その手に、同じように手を上げて答えて隣に座り、説明するのは元恋人がストーカーじみている事と、徹底的に無視している事。そしてケリが付くまでは実家にもシマの家にも戻り辛い事。

 この当時は家の裏にある駐車場に親父と弟の車が止まっていたので、万が一車に何かされたら……とか思うと。帰るに帰れなくなったのだ。

 とは言っても洗濯や掃除をしに帰ってはいたのだが、それは駐車場に2人の車がない時間帯だから出来た事。

 俺はかなり真剣に考えていたし、かなり真剣にヨッシーが恐ろしかった。先輩の部屋にヨッシーがいる時は公園のベンチで寝ていた位に。

 それなのに、なんだか一気にどうでも良くなってしまった。

 声に出して報告をしているうち、なにかされたら通報したらいいだけだと思ったのだ。女性に散々そう言われていたにも拘らず、この時初めてしっかりと納得出来たのだと思う。

 「で、今日はどーするん?」

 何でもなさそうに尋ねてくるシマ。

 「アホらしーなってきたから帰るわ。話聞いてくれてありがと。珈琲奢るわ」

 2人で珈琲を飲んで解散し、俺はそのまま家に帰り、それ以降先輩の部屋には行かなくなった。

 それからも時々スーパー内でヨッシーを見かけたが、声もかけず、声をかけられても無視し続け、いつからだっただろうか、気が付けば全く見なくなった。

 その事を女性に報告をしたいのだが、あの日以降はログイン時間も合わず、徐々に女性のログイン頻度も下がり、結局何も伝えられないまま今に至っている。

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