再会
家にはい辛いがネットカフェに行くお金もない。
そんな時は駅前にある本屋さんで立ち読みをして時間を潰していた。
ある日の事。
立ち読みをしている俺の隣に、黒で統一された装いの怪しげな人物がやって来るなり、
「おひさ」
声をかけてきた。
誰だ?と顔を見てもいまいちパッと思い浮かぶ知り合いがいないので、俺はゲームセンターで何度か見かけた人なのだろうと納得し、
「はぁ……」
一応返事をした。
しかし、話を聞けば聞くほどゲームセンターでの知り合いではないと分かり、この黒い井出達の人間が中学時代に入っていたバスケ部の先輩である事が分かった。
「腕大丈夫?」
と、バスケ部を止める切欠となった腕の怪我を今更心配されてもどうして良いのか分からなかった俺は、視線を本へと戻しながら、
「はい」
と、一言。
早く何処かに行って欲しいという願いも空しく、先輩は立ち去らずに隣に立ったままでアレコレ聞いてもいない事を喋り続けていた。
まとめると、怪我の事を謝りたいらしく、元バスケ部の面々を集めて同窓会もどきをしたいらしかった。
「日曜にしよか」
こうして日曜日に待ち合わせ場所に行って見れば、それは同窓会というよりも合コンに近い集まりになっていたのだが……何をどう見てもバスケ部とは関係のなかった筈の元恋人の姿があった。
携帯を折った切欠の元恋人。因みにあだ名はヨッシー。
ヨッシーからしても俺が来る事は予想外だったのか、挨拶も何もなかった。
合コンが始まれば、後は盛り上がっている人物がどんどん仕切って楽しむので、乗り遅れた者は食べる事に集中する位しかやる事がないのだろう、ヨッシーは俯いたままチビチビと飲み物を飲むだけ。
放っておけば良かったのだろう。
本当に、放っておけば良かったのだ。
しかし、俺はヨッシーに近付いて尋ねてしまったのだ。たった一言、
「楽しんでる?」
と。
同窓会と言う名の合コンは、先輩の住む部屋での2次会も含めて大いにもり上がったのだと思う。
俺はといえば、ヨッシーに声をかけてから延々とアルコールを摂取しつつの身の上話を聞かされ続けていた。
急に家事を任される事になったヨッシーは、料理や洗濯のやり方など基本的な事も教えてもらっていないのに出来る訳がない!と、随分と荒れていた。
その状況は家事をするようになった頃の俺と境遇が似ていて、なにかヒントにでもなれば。と、俺も俺で熱心に喋ったせいで2人だけの空間を作り上げてしまった。




