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SHORTで、俺。  作者: SIN
ニート

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472/485

保険

 祖母は長い期間同じ保険会社と契約していた。

 集金かなにかが来る時も顔なじみの人が来るからなのだろう、まるで友達が来るテンションでお茶を用意したりしていた。

 それが保険の切り替え?時にもなれば、前日から熱心に掃除をして、お茶とお茶菓子を用意するほどには歓迎していた。

 保険の人が来てダイニングに座って始まるのが保険のプランが書かれているパンフを眺めつつの世間話。

 それが保険の人のセールス術なのだとしても、祖母にとってその時間は楽しいひと時だったに違いない。

 ダイニングから聞えてくる楽しげな会話は結構な長時間続くので、途中でトイレに行きたくなったら地獄を見る事になる。

 ギリギリの、更にギリギリまで我慢して、そこから始まる無の境地……でも駄目な場合は大人しくトイレに行かなければならない。

 こうしてトイレに行くためダイニングに出ると、保険の人は俺にまで保険を勧めてきた。

 何でも、若いうちに入っている方がお得なのだとか。

 いや、まずはトイレに行かせてくれないと病気になります。

 スッキリしてからダイニングに座ると、何故か話は物凄く進んでいて、祖母が

 「お金だしたるから入りぃな」

 と、保険の人と一緒になって勧めてくるのだ。

 お金を出してくれると、そこまで言われてしまったので改めてパンフを眺めて気になった“1年以内に病気をしていない方”の文字。

 「あー、自分少し前までイスコチン飲んでました」

 厳密に言えばウイルスを持っていただけで発病はしていなかったが、10ヶ月にも及ぶ長期間薬を飲み続けたのだから、病気と言っても良いだろう。

 「お前そんなん飲んでたんか?」

 「うん」

 なんとなく気まずくなったので、挨拶をして自室に戻った。

 保険の人がパンフを置いて帰り、祖母は親父とも相談しながら保険を選んでいるようだったのだが、結局保険には入らなかった。

 入れなかった。

 祖母が背凭れを使わずに座っている事が出来なくなってきた頃、保険の人が家までやって来た。

 その時祖母はダイニングにいたので、やって来た人物をしっかりと見た筈だ。

 「保険の事でー……」

 保険の人は慣れ親しんでいたのか、俺の許可もなくドアを大きく開けると玄関に入って来ようとした。そしてダイニングの椅子に普通ではない座り方をしている祖母を見た瞬間、

 「いりませんねっ?はい!」

 ドアを勢い良く閉めて帰っていった。

 「誰が来たんや?」

 姿を見て、声も聞いた筈なのに、祖母が俺にそう尋ねてくる。

 「なんかのセールスの人」「保険の人」

 俺はどっちを答えたのだろう。

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