図書室で
図書室には本を読むスペースが2種類あった。
長椅子とパイプ椅子の並んだ如何にも図書室と言わんばかりのスペースと、低学年用なのだろう、絨毯を敷いただけのスペース。
そんな図書室での読書の時間は、児童が好きな本を選んで読み、感想文を書くと言う楽しい部類に入るだろう授業内容になっていた。
読書の授業が始まると何人かは行儀良く椅子に座って読んでいるのだが、何人かは絨毯のある場所で読んでいた。中には本を読まずに暴れているだけの児童もいたりする中で俺は絨毯の真ん中を陣取ってうつ伏せに寝転がり、肘を付いて上半身を起こした姿で本を読んでいた。
痺れ始める腕をどうにか誤魔化しながら同じ体勢で、同じ本を何度も、何度も。
1、2年の担任はイラストレーターを目指していて、時間を見付けては生徒を描いていた。
斜め方向には俺を見ながら絵を描く担任。
動くなとは言われなかったが、なんとなく動き辛くなってしまった俺は、出来る限り体勢を維持したまま延々同じ本を何度も読み返すしか出来なくなった。
ペラッとノートを捲った担任、描き終えたのかと喜んだのも束の間、そのまま2枚目を描き始める。
「センセー私も描いてー」
数名の女子児童にせがまれた担任は、2枚目の絵を途中放棄してページを捲り、集まっていた女子児童3人をまとめて描き始めた。
助かった。と体勢を崩し、読み飽きた本をしまって他の本を楽な姿勢で読み始めたのだが、その本を読み終えて顔を上げる頃、真正面に担任が座っていて、ノートに絵を、描いていた。




