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SHORTで、俺。  作者: SIN
高校 3年

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卒業式

 高校の卒業式、国歌斉唱についてギリギリまで先生同士がモメているのを他所に生徒達は別の計画をたてていた。

 無事に卒業出来た事を楽しもうではないか!

 そんな理由で始まった計画は、卒業証書授与の時に名前を呼ばれた後の返事を、自分の好きな言葉を叫ぼう、と言う自由なものになった。

 なにを言おうか?

 奇抜なものにした方が思い出になるんじゃないだろうか?

 だったら全力でモノマネでもしようか?

 こうして陰ながら練習した「ポォ~ゥ」誰のモノマネなのかはお分かり頂けただろうか?あの有名なポップ界の王様である。

 こうして訪れた卒業式、喉の調子も良かったので恥ずかしさが出なければかなり完璧に言う事が出来る筈だった。しかし、卒業生入場の時の事、俺は見てしまったのだ。

 保護者席の真ん中あたりに座っている母の姿を。

 頭が真っ白になった。

 それでも3年1組なのだから順番はスグに回ってきてしまう。

 送る言葉とか、そんなモノを聞いている余裕はなかった。なにか他の言葉を、頭の中はそれしかない。

 「木場」

 終にその時になった。立ち上がり、一言。

 「あ、はい」

 言い終わった後、かなり恥ずかしくなってスグに座った俺だったが、他の生徒達の一言を聞いていくうちに恥ずかしさは消えていた。それに、3年1組だけで好きな事を言おうと決めていたのだが、2組も、3組も好きな事を叫んでいた。

 最後のクラスは1人叫ぶごとに「○○君(○○さん)サイコー!」との歓声付で。

 卒業式が終わり、生徒達はグランドや教室などで学生生活最後の日を過ごしていた。

 高校の制服にはボタンが沢山あった。

 中学の時には「袖のボタンをくれ」と言われたものの、俺はまだ待っていたのだ。あの伝説の言葉を。

 「先輩」

 来たか!?

 緊張しつつ振りかえると、そこには喋った事もない後輩が立っていた。名札を見ないと名前すら分からなかったのだからもしかしたら初対面だったのかも知れない。

 「なに?」

 後輩の目が縦に何度か動くのを見ながら、終に待ち望んだ言葉が聞けるかも知れないと内心ドキドキしその時を待つ。そして放たれた言葉は。

 「先輩の制服下さい」

 だった。

 第2ボタンだけじゃなく、根こそぎ!?

 余りにも予想外で面白かったので、俺は後輩の望みどおりに制服の上着をあげたのだった。

 まぁ、その後の進展なんてものは全くなかったのだが。

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