ノーシーボ
テスト勉強でもしよう、という素晴らしい口実でシマと2人きりの部屋。しかし、やる事といえばテレビ観賞だったりする。
撮り溜めていた番組を一緒に見る事になったのだが、当然等倍速では時間が足りないので1,5倍速から2倍速。元々早口の人のコメントなどは聞き取りが難しい。
夕方も過ぎ、そろそろシマの親御さんが帰ってくるような時間、帰り支度を始める俺にシマは、今見ている番組を最後まで見てから帰れ。と。
いつ親御さんが帰ってきても良いようにと正座してテレビを眺める。
テレビでは科学的な実験映像が映っていた。
ヘッドフォンで火が燃えている音を聞かせながら、鉄の棒を火で赤く熱している映像を見せ、冷やした鉄の棒を肌に当てる、という物だった。
実験を受けた人は大袈裟に熱いと椅子から転げ落ちたり、飛び跳ねたりといった反応を見せている。
ホンマかいな?
「こんなん嘘やろ~」
シマも俺と同意見だったらしく、画面を指差しながら笑っている。
俺はシマのシャーペンを手に消えているストーブに向かい、さも熱している最中ですよ、といった感じに翳して見せた。時々「熱っ」と小声で言いながらだ。
ストーブが消えている事はシマも分かっていたし、こういう実験を見た後なのだから俺が何をしようとしているのかも分かっていた筈。しかし、
「熱いで、熱いからな」
と言いながらシマの腕にシャーペンを押し当てた瞬間、
「あっつ!」
かなり激しい反応があった。ノリにしたって大袈裟過ぎるので本当に熱かったのか?と心配になったほどだ。
触れたシャーペンは普通の温度、寧ろ冷たい。
それでも熱いと言うので心配になり、シャーペンを当てた腕を見てみると、どういう訳なのか、赤く腫れていた。
火傷?
本当に熱い物を当てた訳じゃないのに火傷!?
なんにしたって腫れているのだから冷やした方が良いのかも知れない。
コソッと台所に行き、ラップと氷を1個拝借して部屋に戻り、腫れている腕をラップでグルグルと巻き、その上から氷を当てる。
「え?なにこれ」
「火傷の対処法やけど?」
「ぷっ、シャレ?それシャレ?」
「火傷が痛いんは空気に触れるから。やからラップで空気に触れへんようにすんの」
「へぇ~。あ、ホンマや。治ってきた」
嘘を言うなと氷を退けたシマの腕には、赤く腫れた痕がなくなっていた。




