文化祭委員
文化祭執行委員に高野(仮)が選ばれた。
高野とは、友達とまではいかないがゲームセンター仲間の1人で、暇潰しにやったダイエット企画でペアとなった元ソフトボール部の生徒だ。
高野は友達が多い方に入るのに運が異常になかったのだろう、同じクラス内に友達はいなかったようだ。
こうして遠い知り合いの俺に、
「一緒にやろう!」
とか声をかけてきた。
何をすれば良いのかも良くは分からなかったものの、衣装係とかにされるよりも楽なのだろうと考えた俺はその場で承諾したのだが……。
「えー?高野と木場?誰それ(笑)楽しいモン絶対出来へんやん」
と、活発な生徒のブーイングと薄ら笑いにより却下となり、その結果、高野と俺の他に活発な生徒男女2名ずつが追加で加わった。
追加で加わった活発な男子生徒の1人は、活発な生徒の中でもリーダー格の存在で、苗字をさん付けで呼ばれていた。それもクラスメート達からだけではなく、学年全体。だけにも留まらず、カズマの同級生となる2年の面々からもそう呼ばれていた。もちろん先生方とも仲が良く、視聴覚室を「貸して」の一言だけで貸してもらえたし、過去の文化祭ビデオを見せてもらえたりもした。
何が良いかなぁと1人で悩むソイツは庄司さん(仮)と言う。
庄司さんの会議の進め方は、強い者独特の雰囲気が隠れもせずに前面に押し出されていて、それまでに色々と考えていた俺達を真っ向から否定するようなものだった。
例えば、展示物にするのか劇にするのかダンスにするのかと、色々と意見を出し合って、それで何にするのかを決め、次にお題とか演目を決め、それから台本の内容とか、出演者とか、小道具とか大道具とか、音響、衣装を順に決めていくのが普通だろう。
しかし庄司さんの会議は、もはや会議とは呼べないもので、決定事項をぽんぽんと言われるだけ。
1番腑に落ちなかったのは演目だ。
庄司さんが会議に1時間ばかり遅れていたので、残りのメンバーで演目について話し合いを始めていた。
高校最後の文化祭という事ではあるが、完全オリジナルにしてしまうのはハードルが高いとの結果を出した末の西遊記。大まかな流れはストーリー通りで、台詞や立ち回りを演技者に合わせたものにしよう。と。
そして次のクラス会議の時に演者を推薦や自薦で決めよう!と。
「ゴメンゴメン」
そう言いながら現れた庄司さんは、椅子に座るやいなや俺達の1時間で繰り広げた会議内容をメモした紙を眺めてグシャ、ポイ。
「は?」
「高校最後やで?オリジナルでいくで!」
ここまで俺は結構な熱意を持って文化祭に取り組もうとして燃えていたが、グシャっとされた瞬間に鎮火してしまった。
あー、はいはい。勝手にしてください。




