2人の結末
本気で宿題に取り掛からなければならない時期。
今までならば適当に済ませていただろう宿題。しかし“夏休みの終わりかけに徹夜するほど必死に宿題をする最後のチャンス”だと思うとやらずにはいられなかった。
後は普通に補習で出た大量の宿題を提出しないと駄目だったから。
今のこの焦った空気感は、来年には感じられないものだ……。
宿題をやり始めて暫く経つと、今度は“こんなにも長い夏休み事体が最後の経験ではないだろうか?”と思い始めるようになり、意味も分からずに物凄く焦った俺は、宿題は夜にする事にしてゲームセンターへと向かった。
真夏のベンチには特に誰もいなかったので近くのファストフード店に向かうと、そこには昼食中のゲームセンターの仲間が数人騒いでいた。
挨拶をして近くに座ると、
「なぁ知ってる?」
と、返事に困る事を言われた。
「何を?」
詳しい話を聞く姿勢を見せると、そいつは急に小声になって結構詳しく色々と教えてくれた。
その内容はメグとキバーさんのその後の事。
俺が知っているのは、学校を辞めたメグは両親とモメて家出し、キバーさんの働いている所で一緒に働き、同棲を始めた。という所まで。
何処に住んでいるのかも、連絡先も、一切知らない。
話によると、キバーさんはしばらくの間は大人しくしていたそうだ。
しばらくの間は。
結末は、高校生に手を出したキバーさんはその子にいれあげ、メグを捨てたという。
本当にそんな事が?
ゲームセンターに集う人間は、結構話を盛る癖を持っていたので、この話も多少は盛られた話なのだろうと思ってはみたのだが、確かめなければならないと思った俺は何も食べずにゲームセンターへと向かった。
「キバーと喧嘩しに行くん?今の時間やったらゲームしてると思うで!」
そんな俺の後ろを着いてくる情報提供者。
喧嘩をしに行く訳ではなくてただの確認。けど、その内容によっては喧嘩もありえる程イラッとはしていた。
ゲームセンターの中に入り、1階を見て、2階もくまなく見回したがキバーさんの姿はなかった。その代わりいたのはキバーさんの親友である岡さん。
「ちょっと聞きたい事があるんですけど」
そう言って話しかけた俺に岡さんは丁寧に事の説明をしてくれた。
ファストフード店で聞いた話しよりも酷い内容となっていたが、最後にメグが実家に戻れたとの結果を教えてくれた分まだ救いはあった。
「アイツがあんな奴やとは思わんかった」
最後にそう怒りを露にした岡さんは、盲目的にキバーさんを「いい人間」だと信じて疑わない人で、何があろうともキバーさんの味方をしていた人物。そんな人が怒りながら話してくれた内容に嘘はないのだろうと判断した俺は、それから暫くキバーさんの姿を求めてゲームセンターに通ったのであった。
しかし、会えた事は1度もない。




