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SHORTで、俺。  作者: SIN
高校 3年

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ハエトリグサ

 夏休みも後半に差し掛かり、いよいよ本腰を入れて宿題に精を出さなければならない時期になっていたある日、勉強会でもしようと集まった筈のシマと2人で何故か植物館に来ていた。

 真夏の真っ昼間、館内にはそんなに人がいない。そうなるとやる事は1つしかない。

 誰もいない館内、少しでも涼しいエリアで涼しい風を全身に浴びるのだ。

 しかし、そんな天国を何時までも陣取っている事も出来ず、先に進めとの無言の圧力を係員から受けてしまった。

 移動した先にあったのは食虫植物コーナー。

 食虫植物はハエトリグサしか知らなかった俺は、かなり大きな袋のような形をしている植物の中を、覗き込んでしまった。

 その植物の名はウツボカヅラ。袋の中に餌を誘い込み、そこで消化すると言うなんとも恐ろしい奴である。

 覗き込んでしまったその中には、消化途中の餌がいた。

 「なぁ、ちょっと見てみ」

 「絶対なんかおるやん!絶対嫌や!」

 結局1度も覗き込まないまま食虫植物エリアを足早に去って行くシマは、虫が相当苦手なのだ。

 出口付近にはホールがあり、そこで植木市みたいなものが開催されていた。中にはどうやって持って帰るんだ?と疑問に思わずにはいられない程の立派な松の木まであって、土とか、プランターとか、枝切りバサミ的な物まで色々売っていた。

 そんな植木市の片隅に、ひっそりと佇む1人の女性係員。

 女性の前にはテーブルがあり、その上には3鉢のハエトリグサ。そして派手な看板が1つ。看板にはハエトリグサふれあいコーナーとあった。

 気になる。

 かなり気になる!

 こうしてシマの手を引っ張りハエトリグサふれあいコーナーに行くと、係りの女性はかなり丁寧にハエトリグサの説明をしてくれた。

 中にある毛に2回刺激を与えると物凄い勢いで口が閉じる。そう言いながら俺達に麺棒を手渡す女性。これはやれという事なのだろうとまずはシマが試しにツンツンと中を突いた。

 パクッ!

 おぉ、本当に閉じた。物凄い勢いではなかったが、閉じた。

 続いて俺の番。さっきの口はまた閉じたままなので、別の口の中に麺棒をソッと入れ、ツンツンと中を突いた。

 無反応。

 あれ?

 もう1度突いてみるが、何の変化も見られない。

 「ちゃんと毛を刺激して下さいね」

 女性は言うが、初めから毛を狙ってツンツンしている。しかしいくらやっても無反応なので、見兼ねた女性は別の鉢を持って来た。

 なんとしてでもガブッとさせたいという意欲を感じ、次こそは絶対に食われるんだ!と、かなり気合が入った。

 新しく持って来られたハエトリグサの、1番大きく開いている口に向かって麺棒を、少し強めにグイッと入れる。

 ゆっくりと、かなりゆっくりと口が閉じて行く。しかし完全に閉じきらず、半開きのまま放置された。

 「仲間やと思われてんちゃう?」

 「んなアホな」

 キレイにオチが付いたので、俺達はそういう事にしてその場を離れたのだった。

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