増水
強くなるばかりの雨脚。
暗いテントの中で俺達は早々に寝てしまおうと意見が一致して寝転ぶ。
薄いテントのスグ下はゴツゴツとした岩場になっていて、寝転ぶだけで体中が痛い。
出来るだけ自分の体にぴったりな場所を探し、そのまま睡魔の訪れを待つ事しばらく。自転車で山を登ってきた疲れが出たのだろう、意外とすぐに眠る事が出来た。
しかし、俺は深刻な事態に直面して目が覚めてしまっていた。
夏休みにキャンプに来ているのだから、当然真夏である。だというのにも拘らず、寒い。
寝転んだまま手を伸ばし、カバンの中からタオルを出して掛け布団にしようと思い付くほど寒い。鞄を手探りで探していると、シマに触ってしまった。途端に飛び起きたシマは、
「うわっ!」
と一声上げてから俺をグイッと引っ張った。
ポタ、ポタ。
そんな騒動にケージも起きる。
「水入って来てるやん!」
ケージが指差しているのはさっきまで俺が寝ていた場所で、そこには水溜りが出来ていた。
どうやら岩場のゴツゴツとした石でテントに穴が開いたらしく、そこから徐々に水が染み出してきたようなのだ。
そしてそんな水溜りの中で俺は寝ていた。
そりゃ寒いわ。
とりあえずテントに入って来た水を外に出そうという事で入り口を開けたケージが、ソッと入り口を閉じて戻ってきた。何事か?とシマも入り口のチャックを少し開けて外を見て、また静かに戻ってくる。
何事か?
俺もチャックを開けて外を確認。外は明け方が近いのかうっすらと明るく、雨のせいで増水した川が勢い良く流れていた。
目の前を。
増水した川はテントを張っていた岩場を完全に飲み込んでいたのだった。




