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SHORTで、俺。  作者: SIN
高校 3年

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先輩風

 激しくシマを狙っている子が1人いた。名は谷口(仮)といって、俺と同じ中学に通っていた1つ下の後輩。とは言っても面識などはなかったのだが。

 そしてシマも、回りに「抱きつけー」とか言われると谷口に抱きついたりしていたので、谷口も、周囲も、俺ですら2人は付き合っていると思っていた。

 シマ曰く、友達同士の触れ合い。だったらしいが、谷口は自分が彼女だと信じて疑ってはいなかった。

 その為、ゲームセンターに来る女子達に「彼氏」だと言い回っていたし、シマがゲームをしていようがお構いなく腕を組みに行くし、シマが時々泊まりに行っているキラの部屋にも出入りするようになっていった。

 そんなある日の事……。

 「SIN、ちょっとえぇかな」

 そう言って呼び出されシマ家に行くと、

 「谷口って、SINの後輩なんやろ?」

 と、いきなり問われた。

 「1個下。でも面識はなかったで」

 「んでも先輩やろ?ちょっと言うて欲しい事があるんやけど」

 なんだろうか?と聞いてみれば、谷口は連日シマ家の固定電話に、かなりどうでも良いメッセージを入れてくるのだとか。

 当時のシマ家の固定電話はメッセージが12件入る電話で、12件を越えると1番古いものから順に消えていく電話だった。

 そして、その電話には親父さんの仕事の連絡など重要なメッセージが入っている事も多い。

 そんな電話に谷口は12件全てにメッセージを残すというのだ。

 「ちょっと聞いてみたい」

 シマにとってどうでも良い内容だとしても、谷口にとっては重要な事かも知れな……

 ピー。

 「えっとぉ、もしもしシマァ?あ、シマって呼び捨てしてもた。シマ君やねシマ君」

 ……なんじゃこれ。

 ピー。

 「もしもし、谷口やけどぉ。今日ゲーセン来る?」

 ピー。

 「もしもしー?おらんのー?」

 ピー。

 「もしもーし」

 ピー。

 「今日ゲームセンター来てな」

 と、延々12件。

 古いものから消えていくとの事なので、もしかするともっと電話をかけてきているのかも知れないし、消えたメッセージの中に親父さんあてのものがあったのかも知れない。

 「親父がめっちゃ怒ってんねん。俺から言うても止まらんし、SINからも言うて」

 「分かった」

 谷口の恐ろしい所は狂気じみた留守電メッセージだけではない。なんとシマは携帯の番号はもちろん、固定電話の番号すら谷口には教えていないというのだ。更に、ゲームセンター仲間の誰にも固定電話の番号を教えていないと。

 ゲームセンターのベンチに谷口を呼び出し、人見知りを発動させつつ、

 「何で電話するん?シマ困ってるやん」

 と、余計な事は言わずに直球勝負した。

 「えー?だって好きやねんから会えるかどうか知りたいやん?」

 物凄くヘラヘラと笑いながら、大した事でもなさそうに言う谷口。

 色々言いたい事はあったが、谷口は物凄くキバーさんに雰囲気が似ている。ヘラヘラ笑いながら喋る所とか、一切の謝罪をしない所とか、自分がした迷惑行為を正当化する所とか。なので、何を言っても無駄だ。と思った。しかしそれではシマ家の電話が酷い目に合わされ続けるだけになる。

 どうすれば良いのか少し考え、最終的に親父さんへの迷惑だけは回避させなければならないと思った俺は、

 「人の迷惑も考えられへんのか?シマだけの電話ちゃうねんぞ!」

 と、先輩風を吹かせまくって説教してみた。

 しかしまぁ、予想していた通り谷口はニマニマしたままで相槌も何もなく、一通り怒った後、

 「終わったぁ?」

 とか言ってくる。

 どうやら俺の話は谷口にとっては難し過ぎたようだ。

 だったら!

 「シマがな、これ以上電話してくるならめっちゃ嫌いになるって言うてたで」

 物凄く簡単にした。

 「えー!それは困るー!」

 それ以降、留守番のメッセージは3件ほどに減ったという。

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