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SHORTで、俺。  作者: SIN
高校 3年

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親父の恩人


 母と離婚をしてから親父は少し変わってしまった。

 お酒を飲んでいない時は普通なのだが、飲むと寂しさに火がついてしまうのだろう、泥酔するまで飲み続けてしまう。

 離婚の原因を全て祖母のせいにする事で寂しさを紛らわせようとしていたのかは分からないが、呂律の回っていない喚き声で祖母に文句を言うのだ。

 「そんなに寂しいなら、さっさと良い人見付けぇや!」

 喚く親父に祖母はそう言っていた。

 そんなある日、親父は腹痛を訴えて寝込んでしまった。

 俺も、弟も、祖母もお酒の飲み過ぎが祟ったのだと思っていたので特に何も言わずにいたのだが、3日経っても親父の状態は改善しない。それ所か熱まで出てきて、それまでは痛くても我慢して出勤していた親父が布団から一切出て来なくなった。

 勿論病院へは早い段階で行っていたし、ちゃんと処方された薬も飲んでいたのに、悪化している。

 あまりにも可笑しいので、親父はもう1度病院へ向かった。

 診断結果は確か胃腸炎かなにかで、結局はまた消化を助ける薬を処方された。色々検診して、その結果なのだから信じるしかない。

 もしかしたら今が1番酷くて、ここから徐々に治るのかも?それとも、大きな病院への紹介状を書いてもらった方が良いのだろうか?

 また数日様子を見る事にしたその夜、1本の電話がかかってきた。弟がお風呂に入っていたから、そんなに遅い時間ではなかったと思う。

 「はい」

 そう電話に出ると、挨拶とかそんなのを全て省略した電話相手は、

 「もしもし、お前のお父さん。気ぃ付けた方がえぇわ」

 と、真剣な声で言ってきた。

 母である。

 「え?」

 「お父さん厄年やろ?何か嫌な感じするから、気ぃ付けや」

 病院には行ったし、最善は尽くしていると言うのに、母の言葉がやけに引っかかったので、翌日再び病院へ。

 診断結果に変化なし。しかし、その時にたまたまいた看護師の1人が、もしかしたら。と、診断結果とは全く別の病名を言って来た。

 「大きい病院で1回調べてもらった方がえぇわ」

 こうして向かった大きな病院。

 診断結果は看護師が言った通りで腹膜炎。緊急手術となった。

 母は親父にとって命の恩人となり、祖母は今までの言葉を覆した。

 それは親父が、行き付けのスナックで知り合った女性と良い仲になった。と、酔った勢いで言った時の事。

 祖母は高らかと宣言したのだ。

 「復縁しか認めへんで!」

 と。

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