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SHORTで、俺。  作者: SIN
高校 3年

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一貫性がなくとも世帯主の言葉

 ゲームセンターの明かりがまだついている夜の10時ごろ、ベンチで喋っている俺の所にシマがやって来るなり、

 「そろそろ帰るで」

 とか言った。

 夜の10時なんてものは昼間であるし、家族が起きている時間での帰宅なんて絶対に嫌だった俺は、シマの言葉に対して聞こえない振りをする。

 それでも“帰る”と言った自分の言葉を覆さないシマは、あの手この手を使って俺を帰宅させようとした。

 なのである時、木場家の面々がどういった人間達であるのかを軽く説明した。もちろん脳内でかなりオブラートに包み、随分とマシにしてから口に出した。

 早い時間に帰宅すれば、ダイニングでデロンデロンになるまで飲んでいる親父と鉢合わせ、結構な大声で何かを言われる。あまり聞き取れないのが唯一の救いではあるが、朝になれば祖母からのグチグチ文句で攻め立てられる。

 言う事は大体毎回決まっていて、一通り俺の悪い部分を言った後弟を褒め始めるというもの。そして時々姉への褒め言葉も。

 はいはい。と聞き続けていればそのうち終わる言葉攻めではあるが、これが結構内心を抉ってきて、自分で自分を悪い人間だと思うようになる。

 どうせなにをしたって怒られる、何をしても文句を言われる。良い事をした所で、それが普通だ!と結局怒られる。

 だったらもう「悪い人間」にならなきゃ損だ。

 ただ、本当に悪い事をして「悪い人間」と罵られても面白くなる訳ではない。だから出来る限り顔を合わせないようにしたいんだー……。

 懇親の訴えもシマには意味が分からなかったようで、不思議そうな顔で俺を見ていた。そして少しの間考え込み、

 「時々泊まりに行くわ」

 と、本当に泊まりに来るようになった。

 初めのうちは何事もなく平和なお泊り会だったが、ダイニングで親父がデロンデロンになるまで飲むようになると、ちょいちょい可笑しな事を注意してくるようになった。

 例えば、部屋に鍵をつけるなとか、部屋のドアを開けっ放しにしておけとか。そして事ある毎に部屋のドアを開けようとしてくる。

 しかし親父は良い格好しいなので、シマに対しては「いつでも泊まりに来てえぇよ」とか言っていた……初めのうちは。

 それが数日続くと、急にキレ気味に「何で泊まりに来るんや!?」となった。シマは困惑しつつも「もう泊まりに来ません」と言ったのだが、親父はその後可笑しな事を言い出した。

 「コイツが好きなら泊まりに来い。嫌いならもう二度と来るな」

 コイツと言うのは多分俺の事。

 「えぇ……」

 最高潮に困惑したシマの顔は、ちょっと面白かった。

 結局、嫌いではないとの理由でその日から毎日泊まりに来るようになったシマ。親父も文句を言って来なかったので、これで良いのか?と思っていたある日、母と姉も含めた食事会……飲み会に俺とシマが招待された。

 緊張しているシマにかけられた親父からの言葉は、

 「いい加減に俺はイライラしてる」

 だった。

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