希望
たまたま、本当にたまたまバッタリとヨネゾーに会った。
先に見つけたのは俺だが、友達でもない訳だから。と、声をかけずにその場を立ち去ろうとした。
「おひさー」
しかし、肩を叩きながら話しかけられては振り返るしかない。
「あ、はぁ……」
困惑した気分のまま何とか返事をしながら、何故こんなにも笑顔で話しかけてこれるんだ?こいつ……なんて言葉か頭に浮かんでくる。
「今週の日曜カラオケ行かへん?ヒロ達も来るねん」
は?
「遠慮しとく」
「えぇやん。ヒロ達も友達連れてくるみたいやし」
それなら余計にお断りだ。
「自分も、自分の友達連れていけば?」
「やから誘ってるんやん」
ヨネゾーの中での俺は友達なのか?中学3年の後半、あの雰囲気をお忘れか?
だけど俺は思ったのだ、ヒロとタムを見返してやろうと。特にタムに対しては並々ならぬ恨みがあるのだから、それを晴らすチャンスだ!と。
「日曜、何時に何処集合?」
こうして俺はカラオケに行く事にした。
その日の夜、日曜日に遊びに行こうと言い出したシマに中学3年の後半からの話をして、ヨネゾーに会った事とカラオケに行く事を説明すると、
「アホやなぁ」
との感想が帰ってきた。
「そこそこ精神鍛えられたし大丈夫やって!ちょっと見直させるえぇチャンスやし!」
得意げに言う俺に対するシマの態度は、行かない方が良い。の一点張り。挙句の果てにはドタキャンを進めてきた程。
行く、行くなの攻防戦は、
「じゃあもう好きにしぃや」
と、シマが折れた事で終わったのだった。
日曜日、午前11時の駅前。
時間ピッタリに行くと、そこには既にヨネゾーが立っていた。
「待った?」
「そんなに」
と挨拶を交わした後、しばらく無言で遠くを眺めて不意に目が合い、
「元気やった?」
「まぁまぁ」
「ふうん」
と、また2人して無言で遠くを眺め、また不意に目があって、
「天気えぇな」
「そうやな」
と。
まぁこんな感じでギクシャクしながらヒロとタムを待った。
しかし、来ない。
ヨネゾーが電話をかけてみれば、タムはその時に起床したのだと言い、10分程度で行くと言ったそうな。
しかし、来ない。
2度目の電話をした後しばらくしてからヒロとタムと、後1人知らない人が来た。時間は確か12時を少し過ぎていた位で、3人は3人だけで昼食を食べてきたと言った。
少しばかり腑に落ちなかったが、まだ序盤だからと押さえ、ヒロとタムによる「元気?」「最近なにしてた?」だのと言う一通りの挨拶文句に答えつつ、遅れて来た事の謝罪文がない事に、また少し引っかかった。




