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SHORTで、俺。  作者: SIN
高校 2年

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溜り場

 キラが1人暮らしを始めた。

 それも、俺の家から徒歩2分程というご近所で。

 キラの部屋はワンルームで、ベッドとパソコンデスクとギター以外には最低限の家電しか置かれていない。

 1人で暮らすには全く問題もない広さの部屋だが、ゲームセンターの仲間達の前で堂々と1人暮らしをアピールしてしまったが為に溜り場にされてしまった。

 それも自分よりも年上で、少々ヤンチャな方々が常に部屋でゴロゴロしたり、パソコンを占領していたり、ベッドの上を占領していたり、彼女を連れ込んだり。

 そんな劣悪とも言える部屋に、ご飯を作りに行っていたのはゲームセンターに来ていた女子達だった。

 そうして巻き起こるのが男女関係のもつれや女女関係のもつれ、そして男男関係のもつれだ。

 コンコン。

 窓をノックする音が聞こえて来る事も良くあった。

 大体はメグからの呼び出しで、キバーさんとの事を愚痴るだけ愚痴って戻って行っていたのだが、ある時から愚痴ではなく相談に変わっていった。

 どうしたら良い?

 最終的にそう聞かれたので、俺は学校に来る事と、溜り場ではなくてちゃんと自分の家に帰る事を提案したのだが、そうするとキバーさんが野放しになって、今以上に浮気をするから嫌だと泣かれてしまった。

 別れるとの選択肢はメグの中にはなかったので、俺はメグを連れて溜り場の中へと足を踏み入れた。

 それは夜中の事。

 マンションはオートロック式になっていたのに、ゲーマー達が出入りし易いようにしていたのだろう、ドアの隙間に空き缶が置かれていて、ドアが閉まらないようにされていた。

 溜り場は2階だったので階段を使って上がって行くのだが、その階段に落ちているゴミを見るだけで部屋の中でどんな事が繰り広げられているのかが想像出来てしまえた。

 鍵もかかっていない部屋の中には、部屋の主であるキラは不在。にも拘らず何人かの男女がいて、その中にはキバーさんもいて、1人の女子を後ろから抱きしめている状態だった。

 それを見てもメグは何も言わず、部屋の隅っこに座っただけ。

 「なにやってんですか?」

 意味が分からなかったので、少々人相が悪くなりでもしたのだろう、ベッドの所にいた年上の男がニヤニヤと笑いながら、

 「木場にキバー。キバー同士でキスしろや」

 とかなんとか。

 ニヤニヤとこっちを見るキバーさんと、キバーさんに抱きつかれている女子。

 「キスしろ。やってー」

 嫌悪感が物凄かったのでそのまま帰ろうかと思ったのだが、俺を見上げているメグの表情が目に入って頭にきてしまい、ニヤニヤしているキバーさんの手を掴み、キスしろコールしかしない面々の目が届かないバスルームの中に入った。

 狭いバスルームの中に、2人きり。

 「え?する?」

 アホなのか?

 「メグと付き合ってんねやろ!?何してんの?最低やぞ!」

 年上の男に対してではなく、友達の恋人に対する抗議をした。

 こんな溜り場にいる事は間違っている、大事に思っているならちゃんとしろ。

 しかし、キバーさんには届いていないらしく終始ニヤニヤしたまま。

 コンコン。

 バスルームの戸をノックする音が聞こえて開けると、さっきまでキバーさんに抱き付かれていた女子が立っていて、その後ろにはメグもいて……

 「あ、いや……どうぞどうぞ!2人でお楽しみやったんやんな?どうぞー」

 と、病的な満面の笑顔で強引にバスルームの戸を閉めてきたのだ。

 急速沈下の後、再沸騰。

 ガチャリ。

 「アホか!そんなんやからアカンねやろ?1回2人でジックリ話しあえや!」

 部屋の隅に戻ろうとしていたメグの腕を掴み、ベスルームの中へ押し込んだ後、邪魔が入らないようにと戸の前に陣取って座り込んだ。

 「ちょっと、開けてや!」

 中から聞こえてくる声は無視し、

 「この2人が付き合ってるって知ってんねやろ?やったらちょっかい出すなや」

 と、抱き付かれていた女子にも噛み付く。

 それでもベッドの上にいる年上男に噛み付く度胸はない。

 メグとキバーさんがボソボソと話し合いを始めたのを確認しながら、溜り場に来ている人間なんてロクな奴がいない。とか、劣悪な環境は人間の精神に良くない。とか、部屋の主であるキラが心底気の毒だ。とか、考え付く限りの悪態を頭の中だけで叫んでいると、部屋の外から足音が近付いて来た。

 またロクでもない人間がきたらしい。

 と、玄関を睨み付けた次の瞬間。

 ガチャリ。

 「あれ?なんでここにおるん?」

 シマが入ってきた。

 「シマくぅーん。こっち来てー」

 ついさっきまでキバーさんに抱きつかれていた女子は、今度はシマに声をかけると隣に並び、腕を組んだ。

 「ちょっとあっち行っといてなー」

 やんわりと女子の腕を外したシマは、ベスルームの戸の前に座り込んでいる俺の隣に立って返事を待っているようだったので、

 「お前もここ溜り場にしてんの?キラの迷惑とか考えへんの?」

 と、部屋にいる全員に聞こえる程度の声で言った。

 「いや、俺ここ来んの久しぶりやで。んで、ちゃんとキラの許可もらってるし」

 え?

 許可制だったのか!?

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