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SHORTで、俺。  作者: SIN
高校 2年

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不思議なクラスメート達

 文化祭の出し物は劇で、演目はピノキオ。

 俺は衣装係で、狐と猫の衣装を作り、当日は幕引き係を務めた。

 劇の出演者達は台詞を暗記していて、読み合わせも連日行っており、リハーサルにも真剣に取り組んでいた。

 後はもう本番を「練習通りにすれば良いだけ」だと自信たっぷりに皆は言っていた。

 まさか、音響係が裏でとんでもない事になっているなど、誰も思わなかっただろう。

 音響係りは普段から欠席しがちな男子生徒と、同じく欠席しがちな女子の2名だったが、そのうちの女子は楽しそうに選曲をしているように見えたし、実際文化祭の準備期間中の出席率は高かったと思う。

 リハーサルの時も、この曲の音量はー。なんて、出演者と打ち合わせをしていた位熱心だったのだと思う……。

 そして当日。

 自分が音響係であると知ってか知らずか、ギターを抱えた音響係の男子の方が登校してきた。

 この男子の名は、本橋(仮)。

 女子は本橋に音楽をかけるタイミングとか、順番とかを教えようとして近付いたのだろうが、本橋はそんな事は必要がないと言わんばかりに、

 「俺に任せとけ」

 と。

 もしこんな事を俺が言えば女子にこっ酷く怒られている所だろう。しかし本橋は何故だかクラスメートの活発な生徒達から「もとはっさん」と呼ばれ、もてはやされていた。

 なので、任せろと言われた女子はそのまま引き下がってしまった。それも笑顔で。

 俺達の1つ前の劇が終わり、小道具や大道具をセットしている中、本橋は音響ブースにドカリと座るとギターを構え……。

 ポロロン♪

 行き成り、弾き始めた。

 「え?」

 マイクを通してナレーションの声が体育館に響くが、本橋の演奏は止まらない。

 仕方なくそのまま劇が始まったが、日常的なシーンも、危ないシーンも、山場であろうとも、延々同じ、

 ポロロン♪

 そして最悪な事に台詞に混じって微かに囁くような歌声を被せてくる。

 幕を引きつつ、徐々にイライラしてきた。

 準備期間には来ず、本番にだけやってきた奴が劇を台無しにしているのだ。なにより、同じ音響係の女子が可哀想で仕方ない……。

 と、思っていたのは俺だけだったのか、劇が終わっても本橋を咎める生徒は1人もおらず、皆は皆を賞賛して盛り上がっていた。そして音響ブースの本橋も得意げな表情で、その隣には同じ音響係の女子が、笑顔でいたのだ。

 え?

 なんで?

 これで良いのか?

 これが正解?

 良く分からなくなった俺は、メグとシマに合流して早々自信ありげに言ってみた。

 「どうやったよ俺らの劇!」

 メグはキバーさんに対する憤りが大き過ぎたのだろう、不機嫌そうに、

 「良かったんちゃう?」

 と言って、携帯に視線を落とした。

 そしてシマは、

 「うん、良かったと思うで」

 と、笑顔。

 やっぱり、俺達の劇はアレで正解だったのか……理解は出来ないが、活発な生徒の誰からも文句が出ていないのだから、何がどうあっても正解なのかも知れない。

 「……やろ!」

 意に反して得意げに笑ってみた時、んー。と首を捻ったシマは1つだけ訂正した。

 「あー、まぁ。BGMはイランかったかなー」

 と。

 「やんな!」

 俺は全力で同意した。

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