呼び名
シマ君さんは俺の事を「木場ちゃん」と呼んでいた。
俺はシマ君さんの事を「あの」とか「なぁ」とかで呼んで、名前でもあだ名でも呼んだ事がなかった。
それでも特に困った事はなかったのだが、ある時メグに聞かれたのだ。
「ゲーセンで1番仲良い人って誰?」
それは文化祭前の事で、招待券を誰に送ろうか?とメグと相談している時だった。
文化祭には、生徒1人につき3人まで知り合いを呼ぶ事が出来るのだが、招待する人の名前を書いて提出し、招待券を発行してもらわなければならなかった。
俺とメグで合計6人まで誰かを呼ぶ事が出来るが、ゲーセンでの知り合いを呼ぶとなると少ない。そこでカズマにも意見を聞こうとしたのだが、カズマは既に3人分の名前を書いて提出した後だと言った。
とは言っても俺が仲良くしている人はシマ君さんとクモさんとタイさんの丁度3人。しかしクモさんもタイさんも俺の通う高校に元彼女がいるとかで気まずいから行かないと事前に申告があった。
つまり、俺が誘いたい人物はシマ君さんしかいないのだが……それをどうメグに伝えれば良いのかを迷った。
シマ君さん?
それともシマ君?
苗字?
名前?
「えっと……シ、シマちゃん」
その後、どういうわけなのか俺はシマ君さんの事をシマちゃんと呼びかけるようになり、徐々にシマッチへ、そしてシマと呼ぶようになるのだった。




