薄情者
恋人からよく「薄情者」「無愛想」と怒られていた。
そしてもう1つ、言われた言葉がある。
ゲームセンター仲間の紹介で知り合った子と付き合っていた時の事、その子は5駅離れた場所に住んでいた。
同じ大阪だし、自転車でいける距離ではあったが、5駅。気分は遠距離恋愛だった。
デートはゲームセンター前のベンチで喋るだけである事がほとんど。
恋人からすれば、面白くもなんともなかっただろう。
もし当時に戻れるのなら、自分に往復ビンタでも食らわせてやりたい。
こうして徐々に気持ちは離れ、会う度に「無愛想」「薄情者」と怒られるように。それでも俺の態度に変化がないので、終にその子は地元で他に恋人を作った。
それを教えてくれたのはその子自身。
「同じ学校の子に告白されたから付き合う」
という内容の電話が来たのだ。
色々考えた。
考えて、かなり考えて返事をした。
常に怒られていた事や、退屈なデート内容。そしてなによりもこうして固定電話にかけてきた恋人の覚悟。どうしよう?ではなく、付き合う事にしたという決定事項を告げられたのだから、俺が何を言っても駄目なんだろうと思った。
決して嫌いになった訳ではないが、どうしようもないと思ったのだ。
「そっか」
俺の返事を聞いた恋人は電話の向こうで怒鳴った、
「どうせ、好きちゃうかってんやろ!」(どうせ、好きじゃなかったんでしょ!)
と。




