着物
隣に住んでいたのは俺と同じくらいの年齢の、少し体の大きな女の子で、よく着られなくなったからとお古の服をもらっていた。
その時点で姉は8歳前後なのだからそのお古を着せられていたのは俺だ。
少し可愛らしいデザインのズボンやシャツ。
ヒラヒラとした飾りのあるワンピースは下にズボンをはいて無理矢理シャツとして着せられ、服に合わせるように髪まで長かった。
「ちょっとおいで」
女の子の家で遊んでいると突然母とオバサンに呼ばれた。笑顔の2人は手招きをしていて、俺も女の子もなんの疑いもなく駆け寄った。
「今から写真撮るから、着替えよな」
そう言う母の前には長方形の箱が1つ、中にはピンク色の着物が入っていて、拒否権も何もなくそれを着せられていく。
女の子と2人並ばされ、髪もセットした方が良いだの、巾着を持たせた方が良いだのと会議をする母達。女の子は暇そうに揺れ始め、着物にしわがいくと怒られていた。
「かわい~」
そう言いながら写真を撮る母達に、いや、隣のオバサンに俺はどうしたって聞きたい。その当時はそこまで疑問には感じなかった事なのだが、今になって急に思った。
オバサン、本当に俺を可愛いと思っていましたか?