仲間入り
ゲームセンター前のベンチに座っていると、1人の男が俺の隣に座った。
見た所知らない人だったので無視していたのだが、いつまで経っても隣にいる。
もしかして知り合いだったか?と再び顔を確認するが、やっぱり見た事がない。
待ち合わせだろうか?と周囲を見てみれば他のベンチはあいている。
こういう時に限って知り合いが来ないというのはあるあるなのだろうか?
その後も随分と長い時間隣にい続けた男は、意を決したようにこっちを向くと、
「よくここに来るん?」
なんて声をかけてきた。
ほぼ毎日来ていますけど?なんて頭で思っても口には出せず、
「はい」
とだけ答えると、男はにこやかな笑顔を向けてきて、
「俺も俺も。一緒にゲームせぇへん?」
と、無邪気に。
ゲームセンターにゲームをしに来ているグループの人か。俺はそう瞬時に思い込んだ。
「ゲーム苦手なんで」
そう言って断ると男はまた黙り込んで隣にい続けたが、
「じゃあ、俺ゲームしてくるわ」
と、ゲームセンターの中に入って行き、しばらくしてベンチに戻ってきた。
「よぉっす!負けた負けたー」
何故か親しげに。
普通ならば怪しく思う所ではあるが、ここはゲーマーが大勢集まる場所。1度顔を合わせて挨拶をしてしまえば顔見知りになる。
「おつかれー」
なので俺はゲームセンターから出てきた人に声をかけるテンションで話しかける事が出来た。すると男も肩の力が抜けでもしたのだろう、ドカリと隣に座ってくると、
「名前は?俺、マッツン」
そう言って自己紹介してきた。
「木場っち」
こうして自己紹介してしまえば、仲間となる。




