顔
花見の日、お酒が回った酔っ払い達から帰って行き人数が減ると、残ったゲームセンター仲間達は急に大人しくなり、何人かに別れて思い思いの場所で花見を楽しみ始めた。
俺はそんな仲間達を眺めながら、そろそろ帰ろうとメグを探していた。
駅まで送って行かなければ。
一緒に帰らなければ……。
そんなどこか保護者的な感覚で。
公園の中心部には池があり、その周りには数基のベンチがあって、メグはそこに座っていた。
1人でという訳ではなくもう1人いて、それはいつもニヤニヤとしているキバーさん。
キラのバイクに乗ってコケてバイクに傷を付けたにも関わらず、謝りも悪びれもせずにニヤニヤ笑っていたキバーさんの事は、同じ苗字である事に嫌悪感を抱けるほどには苦手だった。
人間的に可笑しい!
と、思っていたのだが……。
夜中の公園、池の近くという事もあったのだろうか、ベンチはまるで真冬のように寒い。そんな中、多分酔いが回ってしまったのだろう、項垂れて動かないメグに自分のダウンジャケットを被せ、隣に座っているキバーさんを見ていると、良い人のように思えた。
「メグー。帰れるか?」
だからといってそのままにしておく事も出来ずに声をかけると、微妙に顔が上がったものの無言で、変わりにキバーさんが、
「俺が見とくから、大丈夫やで。寒いから気をつけて帰りな」
と、ニヤニヤした顔で言ってきた。
いい人なのか?
いや、いい人なのだろう。
ニヤニヤしてるぞ?
ニヤニヤしてる。
軽い脳内会議の後、俺は、
キバーさんはニヤニヤ顔なのだ。
との自己解決をして、そのまま本当に帰ってしまった。




