フリーマーケット
ゲームセンター仲間とくじ引き屋として夜店に参加した俺は、来年に向けての準備を始めていた。
夜店には沢山の人が来るので、出店に興味がある人間ならば参加したいと思うだろう。しかし商店街自体は結構小さく、ブース数は限られている。その限られたブースの半分以上は商店街の人が出店するので、残りの僅かなフリースペースを一般参加希望者が取り合わなければならない。
その商店街では、2ヶ月に1度フリーマーケットを開催しており、出店費用が1ブースにつき千円。
で、夜店への出店は、そのフリーマーケットに出店した人間が優先して選ばれる事になっていた。
夜店の準備は、くじ作りや商品集めの他に、フリーマーケットへの参加も含まれているわけだ。
別に売れなくても出店しているという事実さえあれば良いのに、参加費以上の売り上げが欲しいと思うのは特別な事ではないだろう。
仲間から商品を集めるといっても2ヶ月に1回の開催なので商品が足りなくなるし、くじ引きの景品も集めなければならない。
そこで選んだ商品の仕入先は、フリーマーケット。
その日の商売敵とも言える他の出店者から安くて良い物を買ってしまうのだ。それも開催時間終了間際の、値下げに値下げを重ねた上での叩き売りが始まった頃合を見計らって。
そんなフリーマーケットで困る事が2つあった。
1つは、商店街から俺の家が1番近いので部屋が商品置き場となってしまった事。
もう1つは、
「あの、フリーマーケットに出店したいです……」
商店街の事務局に行って参加希望を伝えなければならない上、その事務作業員が、
「木場君いつもありがとうねぇ。また遊びにおいでねー」
タムの母親だったのだ。




