実験結果
不意に疑問に思った事をネットを使って調べるのは、今となっては普通の事なのだろう。
しかし、当時の木場家にはネット回線がない所かパソコンもなかったので、疑問に思った事の答えを知るには親父に尋ねるか、図書館に行って調べるかしかない。
それでも答えが分からなかったら?
実験するしかない。
明確な答えが存在しないような疑問も多かったので、実験回数はかなりの数になるのだが、※印なしで発表出来る平和な実験はそんなにない。
1冊のノートに記されているのは、当時にやった実験とその結果。それを平和な順から並べてみて、平和と平和ではないものの中間辺りの実験内容が「紙で手を切るにはどれ位の速さが必要か」だ。
資料などを整理している時、プリントを見ている時、古紙を捨てる為にまとめている時、誰しもが1度位はピッと紙で指を切った事があるだろう。
地味に痛くて痒いやっかいな怪我。
ある日、日直だった俺はクラスメートにプリントを配っていて、気が付いた時には痛痒い傷が1つ出来ていた。
やっちゃったー。とか思いつつポリポリと傷口を掻きながら思ったのだ。
紙で指が切れる条件ってなんだろう?
そこで、サイフの中に入っていたレシートを1枚取り出して指にあて、ゆっくりと引いてみた。
特になんともならなかったので、レシートを引くスピードとレシートを肌にあてる強さを徐々に早く、強くして故意に指を切ろうとして、それを成し遂げた。
のだが……俺は実験している過程が好きだったのだろう、実験結果の記し方が特に実験してまで得るような内容ではないのだ。
例えばこの紙で指を切る実験結果は、
グッとしてシャッ、くらいで切れる。
だ。




