373/485
男装女子
ゲームセンターに来る人の中には当然女の子もいる訳なのだが、そのうちの1人が男装をしていた。
一人称も「俺」だったし、ベンチで恥ずかしげもなく平気で着替えたりしていたので、結構な期間俺はその子を男子だと思っていた程。
普段は学ランを着ていたから、疑う余地もなかった。
その男装女子はゲームセンターに来る男性陣の中でかなりモテており、常に誰かと付き合っていた。
俺はと言えば……。
男装女子は俺よりも1つ年上だったので見かけた時は一応挨拶をしていたのだが、俺が挨拶をすると男装女子はゲームセンターの看板を蹴る程機嫌が悪くなった。
初対面の時からこうだったので、嫌われるような事をする暇もないままに嫌われていたのだ。
結局その男装女子は、誰とでもそれなりに仲良く出来るというコミュ力の高いグループ、オールマイティーグループに属している人の彼女となり安定したのだが。
「こんばんはー」
ドゴンッ!
「帰る!」
終に挨拶を返してくれる事はなかった。




