お弁当
前を歩いている小学生が、お弁当箱の歌を振りつけ有りで歌っていた。
懐かしいなぁと思いながらも、その弁当箱の大きさでそんなデカイおにぎりが3つも入る訳ない。とか、刻み生姜とゴマ塩は合わなそうだから煎りゴマ辺りが良いとか、そんな事を考えていた。
そして行きついた先は、お弁当箱の歌のお弁当を作ってみよう!だった。
歌詞に出て来ない食材を出来るだけ使わないようにと考えながらスーパーの中をウロウロして、重大な問題が発生した。
サクランボが、高い。
仕方ない、のりをサクランボの形に切っておにぎりに貼り付けよう。
人参、椎茸、ゴボウ、レンコン、フキを買って帰り、テーブルに生姜とゴマ塩も置き、生姜をどうしたものかと考える。
俺は生姜が苦手なのだ。
なにか良いアイデアはないものか?
「お前何してんねん」
丁度良いタイミングで祖母が2階からおりてきた。
祖母はテーブルの上に食材を並べている俺の行動に対して怒り心頭だったのだが、そこは気にせずに話しかける。
「お弁当箱の歌って知ってる?」
「人参、山椒、しいたけ、他なんやったかな」
な……なに?
山椒!?
生姜にゴマ塩に山椒!?
薬味まみれ弁当ではないか!
いや、落ち着くんだ、サクランボの穴が埋まったではないか。
戸棚から取り出したるは、山椒ふりかけ!
これで全ての食材は揃った。生姜は苦手だが、食べられないという訳ではない上に弟は生姜が大好き。後はメニューを考えるのみだ!
フキの下処理をしながら徐々に出来上がるお弁当イメージは、フキの皮をめくる作業が終わる頃には完成していた。
フキとゴボウでキンピラを作り、人参と椎茸とレンコンで煮物。そしておにぎり。
山椒ふりかけを使った混ぜご飯おにぎり。視覚的に見えなければ歌詞に出ていない食材を使っても良いという新しいルールを設定して作った、ゴマ塩をふりかけた梅干おにぎり。苦手な味を好きな物の味で誤魔化そうとして考えた、しょうが焼きを具にしたおにぎり。
自信満々で弟に弁当を持たせ、その日の夕方、弁当に対する意見が弟から寄せられた。
「明日から普通で良いから」




