ゴミ捨て
ここまで家事は俺と祖母で分担してやっていた。
洗濯は祖母、掃除も祖母、買い物は夫々で行き、夕飯と自分と弟のお弁当は俺が、弟のお菓子は祖母が用意。親父のビールは親父自身が仕事帰りに買ってきた。
しかし、俺がバイトを始めた事により、バイトのある日は祖母に夕飯を任せるようになり、徐々にバイトがない日もバイトがあると言ってゲームセンターに行くように。
元々洗濯も掃除も祖母任せだったので、俺はここにきてお弁当作り以外の家事をしなくなった。とは言え、それでは流石に肩身が狭く、だったら。と、夫が「家事を手伝っている気」でやる細かい事ナンバー1のゴミ捨てをするようになった。
ご近所のゴミ収集事情は、燃えるゴミとプラ製容器包装は別々で出さなければならなくて、ペットボトルがプラ製容器包装と一緒に入っていたら「収集できません」とのシールが貼られて持っていってはくれない。
で、この頃の親父と弟は、1つのゴミ箱に分別もせずにゴミを捨てていた。
まぁゴミ箱が各部屋に1つしかないのだから仕方がないのだろうし、もしかしたらプラ製容器包装を分けなくても良いと勘違いをしていた可能性もある。
祖母はそれらのゴミを集め、手作業で燃えるゴミとプラ製容器包装を分けてゴミを出していた訳なのだが、俺は「透明な45ℓゴミ袋の中に、半透明や不透明なレジ袋に入ったゴミを出すんだから見えないし大丈夫だろう」と考えていたので、手作業での分別等はせず、しっかりと強く袋を括り、夜中にゴミを出していた。
それから少し経った時の事。
隣に住むご婦人が朝の挨拶をしてくるようになった。
普段なら両者顔を合わせてもスッと視線を逸らして無言なのに、物凄い笑顔で挨拶をしてくるのだ。
不審に思いながらも挨拶を交わすようになって数日後、ご婦人は挨拶と同じテンションでサラリと、ゴミ収集の日がいつか知ってる?と、聞いてきた。
ゴミの日は知っているので、知っています。と、返事をしたのだが……。
「そう!それは良かったわー。いつもゴミの確認してあげてたんやけど、次からは大丈夫やね」
と、笑顔のまま言われてしまった。
分別していなかった俺が悪いのは間違いないのだが、物凄く不気味に感じてしまったので、ゴミに出された袋の全てをチェックしていたのか、それとも木場家のゴミだけをチェックしていたのかは聞けず、ただ、
「すいませんでした」
頭を下げる事しか出来なかった。
その翌日、ご婦人からの挨拶はピタリとなくなった。




