同窓会
同窓会のお知らせ、というハガキが届いた。
それは、中学を卒業して1年も経っていない。という時期だった。
場所は中学校の体育館。
往復ハガキでもなんでもなくお知らせとして届いたハガキは、そのまま招待券にもなっているようで、当日に持って来いと書かれていた。
特に会費が必要になるとも書かれていないし、強制参加だとも書かれていない。
少し顔を出してみるか?
いや、落ち着け。
行った所で会いたい人物なんかいないだろ。
態々休みの日に出かける意味なんかない、
幸いな事に強制ではないんだから、行かなくても良いじゃないか。
頭の中でそう決まった翌日、カズマから言われた。
「行きたいから付いてきて」
仕方なく行く事になった当日。
体育館の中にはいくつかのテーブルが置かれており、その上にお菓子や飲み物。小規模な立食パーティーといった雰囲気で、参加している元生徒らは思い思いのグループに分かれて楽しんでいた。
少しの間立食パーティーを共に楽しんでいたカズマは、目当ての人物が現れた途端に
「ちょっとゴメン」
と、行ってしまった。
カズマが向かった先にはキユウがいて、その傍らにはキラの姿も。
どういう関係になっているのだろうか?とは思ったが、特に気にせず用意されていた飲み物に手を伸ばす。
ボンヤリと時間を過ごしながら見渡す体育館は、中学生だった頃に見上げた体育館とは何処となく雰囲気が違って見えた。
卒業して1年も経っていないというのに、すっかりとお客さんな気分だったのだろう。
そういえばこんな事があったな、あんな事があったっけ。
脳内で繰り広げられる思い出話に時間も忘れ、気がつくと体育館の天井を見上げたまま結構過ごしてしまっていた。
「あの人、何しに来たんやろ」
「昔から1人やん?」
そんな話し声が聞こえて振り返ると、数名の女子で構成されたグループがスグ後ろにいた。
慌てて視線を逸らして体育館を見渡すと、1人で突っ立っているのは俺だけ。
少し向こうにいるカズマはキユウとキラの3人で楽しそうに喋っていたので、もう帰っても大丈夫だろう。と思ったのだが、出入り口付近にはいたのだ。
ヒロと、ヨネゾーと、タムが。
ガヤガヤ、ワイワイとにぎやかな体育館内。
彼方此方から聞こえる笑い声。
普段は小さいと嘆いている自分の体が、異常に大きく感じた。
もっともっと小さくなりたい。
誰の目にも触れたくない。
帰りたいのに一歩も動けずにいるとキユウとキラが出入り口の方へ移動し、カズマは俺の方に走ってきて、
「カラオケ行くわ。じゃあなー」
と、手を振ってきた。
どうやら3人でカラオケに行く事になったらしい。
「バイバイ」
手を振り返したが、既にカズマは俺に背を向けている状態。
上げていた手を誤魔化すように飲み物に伸ばし、コップを両手で持ちながら俯く。
俺はナチュラルなボッチなのだから、こんな状況には慣れている。だから“1人やで”と笑われたって痛くも痒くもない。
1人でいた方が楽だし落ち着けるのだから、寧ろこの状況は俺にとっては良い環境なはずだ。
それなのに、何故こんなにも居た堪れない?
込み上げてくるような、訳の分からない感情の意味が分からない。
「来るんじゃなかったな……」
俺は天井に視線を戻しながら、そう呟いていた。




