夜店
近所にある商店街で夜店が行われるのは毎年恒例の事だったのだが、流石に中学にもなると恥ずかしいと感じて行かなかったし、そこから毎年不参加だろうと思っていたのだが、高校1年の夏、夜店会場の中に俺はいた。
「2枚くださーい」
小学校2年位の子供が俺に向かって100円玉を2枚差し出してくる。
「2枚引いてねー」
と、俺はくじの入った箱を子供の前に差し出す。
まさか、店員として参加するとは夢にも思っていなかった。
ゲーセン仲間、仮にAが出店すると言い出し、黙々とくじを500枚ほど手作りし、500個の景品を用意する為にゲームセンターめぐり。
UFOキャッチャーには時々「お楽しみ袋」と言うのがあり、それを取ると中には10個ほどの粗品が入っている。
こういった戦利品は4等から2等までの景品となり、5等は適当な柄をプリンターで薄めに印刷し、それを無理矢理メモ帳として袋に詰めたもの。1等は豪華にPSPで、1等くじも作って入れた。もちろん1等だと分かるように別の袋には入れたが。
準備期間2ヶ月あまり、協力を要請して集まったガラクタ多数、かけた金額1万以内、作ったくじは500枚。全部売れたらかなりの黒字になる。
「あぁ~また5等やぁ」
2枚くじを買った子供が言うと、隣にいた妹らしき子供が、
「やったぁ、選んでえぇ?」
と、手作りしたメモ帳をキラキラした目で選び始めた。
メモ帳はお子様に人気がありそうな柄にしたので、3等が出ても「5等から選んでも良い?」とか言われる程の人気っぷりを見せ、途中でAは追加印刷に向かった。
「1枚ちょうだーい」
「1枚~」
「2枚買う~」
彼方此方から伸びてくる子供の手から100円玉を受け取り、箱を差し出す。たまに金を払ってもいないのに引こうとする輩もいるので、注意が必要だ。
「めくって」
と、引いたくじを差し出されると、ちゃんと見えるようにゆっくりと目の前で開いてあげる。そして分かりやすく、
「5等やなぁ」
と、声をかける。こうしないとズルをしていると言いがかりを付けられるのだ。
「木場~変わるわ」
追加プリントを終えたAが戻ってきて、更に追加で何枚かのくじも作成してきたようで、箱の中にザラザラとくじを入れた。
喉が渇いていたので少し休憩しようと立ち上がった所で、1組の親子がやって来た。子供は俺に100円玉を差し出すと、
「おっちゃん、1枚頂戴」
と、声をかけてきた。
この日、おっちゃんと言う単語を言われ過ぎていたので、何の違和感も無くくじの入った箱を差し出したのだが、横にいた母親が、
「コラ!そんな事言っちゃ駄目でしょ!?」
と、注意を始めた。
「良いですよ」
声をかけるも熱心に頭を下げる母親は、更に子供に注意した。
「おっちゃんじゃなくて、おねーちゃんでしょ!」
と。




