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SHORTで、俺。  作者: SIN
幼稚園 年長組

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移動動物園

 卒園の少し前、卒園を記念してとかなんだったか、移動動物園が来た。

 狭いグランドに広げられた柵の中にはハムスターやウサギといった小動物が放され、ブランコの所にはロバ、桜か銀杏の木の下にはポニーが繋げられていた。そして砂場の前にはヒヨコ。

 黄色くフワフワとしたヒヨコの周りはアッと言う間に園児で埋め尽くされ、俺は何故か全く人気の出なかったロバの前に立っていた。

 係員に手渡された干草が食料だと知った時の衝撃、ソッと口元にもって行って食べてくれた時の喜び。そんな感動を完全に打ち消すポニーの存在感。

 ポニーは恐ろしく機嫌が悪かったのか、木に体を擦り付けたり、後ろ足で人を蹴る練習をしたり、木に向かって頭突きの練習をしたりと、常に何かを攻撃していた。

 始めはポニーに跨って記念写真を予定されていたらしいが、急遽ロバになった程だ。

 1人ずつ記念写真を撮る為に一旦先生の前に集合し、背の順番で写真を撮る説明を受けた。

 勿論、前にならえ!で腰に手をあてていた俺は1番だ。

 そんな訳で1番に開放された俺は触りたくてしょうがなかったヒヨコの元に急いだ。あのフワフワとして、丸っこい黄色の生き物を。

 恐る恐る手を伸ばし、ゆっくりと持ち上げてみると、フワフワッとした手触り。両手で包み込むようにして持ち、その可愛さにしばし心を奪われる。

 ロバとの記念撮影が終わった園児達が1人、また1人とヒヨコの周りに集まり始めたが、そろそろ移動動物園撤収の時間。先生が集合の合図をかけた。

 名残惜しいが、仕方ない。

 ヒヨコを策の中にソッと戻すと、1人の園児がかなり手荒な感じでそのヒヨコを摘みあげた。

 先生は物腰柔らかに

 「はい、もうおしまい。離してあげてね」

 と言うが、園児は駄々をこねてヒヨコを解放しない。その横では他の動物をゲージに入れている飼育員の人が忙しなく動いている。

 「連れて帰るー!」

 園児も粘りを見せるが、徐々に口調が厳しくなっていく先生の注意におののいたのだろう、半べそをかきながらヒヨコを諦めた。

 園児はさっきまでは「可愛い」「家で飼う」などと騒いでいたそのヒヨコを、かなり雑に投げ捨て、ポトリと落とされたヒヨコは、ベシャッと着地するとヨロリと立ち上がり、他のヒヨコがいる方へヨロヨロと歩き出した。

 ポニーに続く衝撃を受けた俺は、生き物が怖くなった。

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