ノート
高校は色んな中学から生徒が集まるので、友達じゃなくとも同じ中学出身者と言うだけで初めの頃は一緒にお弁当を食べたり、一緒に登下校したりする。
俺は元々ナチュラルなボッチ。しかも少々人間不信と言うダブルの効果でカズマですら学校内では話しかけて来ないほどの近寄りがたい雰囲気を撒き散らしていた。
だからなのか、クラスの変わって行く雰囲気が良く分かった。
クラスに馴染み始めた人間から、趣味の合う人間を選んで友達申請するようになる。そうすると、今までその人間と一緒にいた同じ中学出身者の行動に変化が現れる。
1人にされるのが嫌で、必死にしがみ付いて友達を続ける者と、1人になるのが嫌だから急いで気の合いそうな人間を探す者。
活発的な人間は、活発的な者同志で集まり、より大きなグループを作り、そうでない人間も趣味や趣向が合った者同士で集まって小規模なグループを作る。
そして、中には……。
「一緒に弁当食べても良いかな」
と、オレとメグの所にやってくる人間もいた。
目のパッチリとした、少しノンビリとしている生徒は自己紹介をしないから、俺はこの生徒の名前が未だに分からない。
人に対する興味を失っていたので自分の前と後ろ、隣の生徒くらいの名前しか覚えていなかったのだ。
毎朝の点呼で全員の名前と「ハイ」と言う返事は聞いているが、そんな物は聞こえているだけで頭には残っていない。
「別に良いけど」
と返事をするが、メグは少々嫌そうな表情をしていた。
「昨日休んでて、ノート取れてへんねんなぁー」
だから?と出そうになる言葉をお茶で飲み込み、
「フーン」
と返す。
「えっと……昨日って何の授業があった?」
張り出されている時間割を見れば済む話しを、どうして聞いてくるんだろう?とか長々と喋る事など出来ないので、黒板横の時間割表を指差しながらメグに視線を送ってみれば、メグは完全に知らん振りをしていた。
「国語と……数学Aと……」
生徒はそう1教科ずつ声に出しながら俺からノートを催促するので、仕方なく1教科ずつルーズリーフをバインダーから外して机の上に出す。
「次の授業までには返して」
「分かってるって」
上機嫌の生徒は自分の机に戻るとコピーを取りに行く訳でもなく、だからと言って書き写すでもなく昼寝を始めたので、俺はその時点でルーズリーフの束はもう戻っては来ないんだろうと分かった。
実際、その生徒は放課後になっても返却には来なかったし、翌日から長期間の無断欠席を始めたのだった。




