合格発表
合格発表の日。
自分の受験番号が書かれていなかったらどうしようか?
と、そんな不安の中で高校までの道のりを歩いていくと、合格発表を見に親が同伴している生徒が何人かいた。
入学式じゃあるまいし、大袈裟な。
そう横目で眺めて追い抜き、友達数人で見に来ている集団の横を縫うように通り過ぎ、正門入ってスグの所にバンと張り出されている合格発表者の受験番号を見上げる。
なんて事はない、ただ数字を確認するだけだ。
それでも自分とは関係のない数字から辿るように確認してしまった。
50、51、52、53、54……。
なんだ、全然数字が飛び飛びになってないじゃないか、もしかしたら全員受かってるんじゃないか?
55、56、57、58、62……。
めっちゃとんだ!
え?
めっちゃとんだし!
大丈夫、こういう時の事を考えて公立1本狙いだったんじゃないか。そうそう、1本狙いの人間は落とされにくいって聞いた事あるし、そもそもそう聞いたから受かる気満々だった訳だし!
65、68、69、70、71、72……。
よしよし、数字が飛ばないエリアに入った。
60番台はきっと1本狙いじゃない生徒が多かったんだろう。
そうそう、きっと大丈夫だ。
「やったー受かってる!」
「おめでとう!」
「あった、あった!」
「よかったー」
あちらこちらから聞こえてくる歓喜の声。
仲間同士で喜び合っている様子は、端から見れば微笑ましいのだろうし、喜ばしい光景なのだろうが、受かっているか受かっていないか確認途中の人間からしてみれば、確認が終わったらさっさとどっか行けよと思うばかりだ。
73……74……75、75、75!
あった。
間違いじゃないだろうか?とその後何度も確認しても、俺の数字が書かれてある。
本当に?
受かってる?
数字が書かれている人が落ちているのでは?なんてありえない事まで考えつつ「合格者発表」の文字すら何度も確認した。
周囲の歓喜の声に背を向けて、俺は静かに帰宅する。
通り過ぎて行くのは、これから合格発表を見に行く生徒とその親達。
本当なら、落ちている生徒がいるかも知れないので無表情で通り過ぎる事が望ましかったのだろう。
しかし俺の表情は少々緩み、何度歯を食いしばってもニヤけしまったのだった。




