卒業
中学の制服はブレザーで、男女共にネクタイ着用だった。
ワインレッドという落ち着きのある色で俺は好きだったのだが、クラスの特に女子達はダサイと言ってつける事を拒否していた。
カッターシャツのボタンは第2,3までを開け放ち、スカートはかなりのミニ、そして体操着であるハーフパンツを下に履くという謎スタイルの方が変だと思ったのだが、それを口に出す事は出来なかった。
そんなブレザーにはボタンが3つ付いていた。
卒業式の日、俺は少し早めに教室にいた。教室で飼われていた金魚に最後の餌をやるためだ。
「よく生きた」
そう声をかけながらパラパラと餌を入れ、多分下級生が書いたんだろう、黒板一面に卒業おめでとうと書かれたアートを眺める。
視線を胸元に向けると、さっき正門で付けられた花飾りが見えた。
卒業するんだな。と窓から外を眺め、少しだけ期待する。
もしかしたらあの伝説の言葉が聞けるかも知れない……。
そしてその時は訪れた。
式が終わって何人かが帰宅する中、俺の所に1人の卒業生がやってきたのだ。
あの、と声をかけられて振り返り、そこに立っていた卒業生としばらく見詰め合う。
くるか?くるのか?
「袖ん所ので良いからボタン頂戴」
袖!?




