放課後
卒業を控えたある日の放課後。
日直だった為日誌を書いていると担任がやってきて、無言で横に立ったまま日誌が書き上がるのを待ち始めた。
見られている事に多少緊張はしたものの書き上げ、ハイ。と、日誌を手渡す。
「ちょっとえぇか?」
日誌を受け取った担任は、真っ直ぐに俺を見ている。
「うん?」
なんだろうか?と首を傾げて見せると、パラパラと日誌を捲りながら視線を外し、パタンを閉じてもう1度見てくる。
「1年の頃、眼鏡外せって何回も言うたやろ?」
あぁ、確かに何度も言われた。
入学式が終わった後、教室で行われた自己紹介の時に言われた。
「うん」
ペンを貰った交換条件として、HRでは眼鏡をかけるな。とまで言われた。だから3年になってからは1度もHRで眼鏡をかけなかったし、3年になってからは1度も眼鏡を外せとは言われていない。
「俺なぁ、自分のクラス持つん初めてやってな」
急に当時の話を始める担任。そう興味のない話ではないので、俺は相槌も打たずに話しに集中した。
「なんか暗いのがおるわーって」
なんとまぁ失礼な第一印象だったんだな。
「しかも黒縁眼鏡やったやろ?やから、言い方はアレやけど、イジメとか嫌やなーって」
担任の中で、暗くて黒縁眼鏡はイジメ対象者のイメージだったらしい。
俺がイジメられるのを心配したのか、イジメの処理をするのが嫌なだけだったのかは分からないが、イジメ回避の為の「眼鏡外せ」だった訳だ。
なるほど。
「木場、中学生活は楽しかったですか?」
担任は俺がA組だけではなく、B組でも、D組でも“可笑しな人間”と言われている事は知っていた筈で、友人という友人がいない事も知っていた筈で、どんな風に孤立したのかも大体は把握していた筈で。
それなのにこの質問。
普通に考えてみれば可笑しいのかも知れないけど、1年の時の話しを聞いた後の流れを思えば、可笑しくも何ともない。
俺はイジメを受けて孤立した訳ではないので、
「もーちょっと勉強できたら、もっと楽しかったと思う」
そう答えた。
「それは自分のせいや」
そう笑った担任は、俺の机の上に飴玉を1個置いてササッと行ってしまったので、
「校内お菓子持込禁止ちゃうんかーい」
俺は飴玉に向かって軽くつっこんだ。




