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SHORTで、俺。  作者: SIN
中学校 3年

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 英語の授業では、時々歌を習ったりもした。

 覚えやすい歌詞と、発音しやすい歌を英語教師は選んでいたと思う。

 英語の授業では他にも、本場の英語に触れるため、英語を話す外国の方が講師として数ヶ月来ていた。確か名前はマリーさん。

 かなりフレンドリーな方だったと思うし、実際活発な生徒達により、マリーさんの周りはいつも賑やかで、笑顔に溢れていたと思う。

 さて、英語の点数が1ケタの俺はと言うと、1度たりともマリーさんと話した事はない。同じ教室内にいたとしても、英語の得意な生徒達に囲まれているマリーさんからは、教室の隅で、出来る限り気配を消している生徒など視界にも入らなかった筈だ。

 こうして日々は過ぎ、マリーさんが去る日が近付くと、英語教師は最後となる授業で1人1分間の英語でのパフォーマンスを提案した。

 1人1分なので、3人で組めば3分、5人で組めば5分となる。

 もちろん、俺はボッチなので1人で1分間何かをしなければならなくなった。それも英語で。

 更に不運な事に、発表の順番を決めるくじ引きで、俺は見事に1番を引き当ててしまったのだ。

 1人で、1分間で、1番手。

 まだまだ不運は続き、最後の英語の授業が、翌日と迫っている。

 つまり、猶予が1日しかないのだ。

 困った時の、スピーチ。

 俺はまず日本語で1分ほどのスピーチを書き、その後和英辞典を引きまくって英語の文章もどきを作成し、翌日登校して即効英語教師にその文章を見てもらう事にした。

 担当の英語教師に頼んでも相手にされないだろうと先読みし、1年を担当している、全く面識もない英語教師に話しかけた。

 もちろん、担当の先生に聞きなさい。との注意を回避する為、

 「今日の授業で発表するので、それまで内容は知られたくないです」

 との言い訳付きで。

 快く原稿を受け取ってくれた教師は、フンフンと軽く頷きながら読んでくれて、

 「うん。ちゃんと意味は通じるから大丈夫」

 と、言ってくれた。

 意味は通じるとの言葉から、きっと「バター、塗る、食パン」みたいな単語のみの英文になっていたのだろうと思う。

 始まった英語の授業。

 まずは英語教師が英語でなにやら挨拶みたいな事を言い、トップバッターの俺に前に出るようにと言った。

 原稿を握り締めながら教卓前に立つと、ドンと真正面に座っているマリーさんが見える。

 持ち時間は1分しかないが、俺の次の発表をする6人組ほどの女子グループが、発表に使用する重要なものが行方不明だと、遠慮もなく騒いでいた。

 これは好機だ。

 緊張していた俺は、教卓を横に押し退けて立ち、出来る限りマリーさんに近付いた。するとマリーさんも俺の目を見て注目してくれたから、喧しい女子達に感謝しつつ1分間のスピーチをした。

 教室の後ろの方にいる生徒には全くなにも聞こえていなかっただろうし、1番後ろに立っていた英語教師には、むしろ騒いでいる女子達の声しか聞こえていなかった筈だ。

 だけど、マリーさんには俺の声は聞こえていて、大きく頷きながら聞いてくれて、サンキュー。と礼をした後、物凄く大きな拍手をくれた。

 「え?あの人なんかやってたん?」

 「知らん。なんも聞こえへんかったし」

 こうして誰の印象にも残らない発表を無事に終えた俺は、次に出てきた6人組ほどの女子達が英語の授業で習った英語の歌を3曲披露するのを、ボンヤリと聞きながら、歌が被ったと嘆いている男子3人グループの小声での緊急会議を、大変だなぁーとノンビリ聞いていた。

 ボッチで発表したのは俺ともう1人いて、それはヨネゾーだったのだが、ヨネゾーは英語での親父ギャグを披露していた。

 覚えているのは、

 「ワッツタイムイズイットナァーウ? マイファ~ザ」

 で、それを聞いた俺は1人、盛大に笑ってしまったのだった。

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