昼休みのハエ
昼休みの事。
さぁ今から弁当を食べよう!と、鞄を取ろうとして見えたのは、机の足に止まっていた1匹の虫だった。
蟻とか蜘蛛とかではなく、ハエ。
ノート等で叩こうと思っても机の足なので叩き辛いだろうし、仕留め損なってこっちへ向かって飛んで来られても嫌だ。
こんな生徒が大勢いる教室内では派手に動く事も出来ないし、席を交代してくれるような友達もいない。だけど、この1匹をどうにかしない事には弁当箱を開ける気にもならない。
ポケットティッシュを2枚重ねにして持ち、ハエに睨みを利かせる。
ターゲットの大きさは1センチ程、素早く摘んで捨ててしまおう!
「……」
ジジジジジ、とか振動が来たら嫌だな……地味に机を揺らしてハエの居心地を悪くすれば飛んでいくかも?
けど、こっちに向かって飛んできたら……いやいや、摘んでジジジよりもマシだ!
トン、トン。
コン、コン。
ターゲット、微動だにせず。
どうしようかと途方に暮れ、ティッシュを片手に持っていた俺は、その状態のまま昼休みを過ごしきってしまったのだった。
結局ターゲットは、本鈴が鳴った後に教室に戻って来た生徒の1人が俺の机に当たった事により飛んで行った。




