灰皿
小学校の校長は昔美術の先生だったとかで、校長自ら指導しての焼き物授業があった。
粘土の塊を渡されて、皿とかコップとかを作る生徒達の中、俺は20センチ程の大きな星型の灰皿を作成した。
灰皿にはタバコを置く為の窪みがある。それが妙に気になっていた当時の俺は、窪みを作らなくてもタバコが置ける形として星型を選んだ訳なのだが、焼きあがった俺の灰皿を見た者は誰1人として灰皿だと認識してはくれなかった。
それでも意気揚々と持って帰り「灰皿です」と説明し、どんな風にタバコを置くのかという見本を見せながら親父にプレゼントした。
1回も正しい使い方はされなかったが、それでも“たわし置き”として使用してくれていたので、それで満足だった。
弟が小6の時も、校長による焼き物授業が行われた。
粘土の塊を渡され、クラスメート達が皿やコップを作る中で弟は10センチ程の正方形で、4方の辺に1つづつ窪みをつけた、誰が何処からどう見たって完璧な灰皿を作り上げた。しかも茶色で高級感まである仕上がり。
それをプレゼントされた親父は、弟を大層褒め称え、現在でもその灰皿はダイニングに置かれている。
他にもう1つ、姉が親父にプレゼントした灰皿は、親父の自室に。
俺の“たわし置き”はと言うと、結構早い段階で「これなんや?」との言葉と共に大型ゴミとして出されてしまった。
人にプレゼントする物は、明確に使用方法が分かるシンプルな形が良い。という事を学んだ出来事だった。




