お遊戯会
お遊戯会では劇をする事になっていた。
年少組の時に何をやったのかは良く覚えていないが、年長組の時は「ブレーメンの音楽隊」だった。
ちゃんと1人1役与えられ、1人1台詞。
誰が何の役をするのか、と言う抽選会もなければ、立候補やら推薦と言う方法も取られず、先生の独断と偏見で勝手に役と台詞を決められていく。
こうして俺に与えられた役は「泥棒」で、台詞は「はっはっは、盗んだメシは美味い」と言う幼稚園児にあるまじき台詞。
他の泥棒も「今日もいっぱい盗んだ」とか妙に生々しかった。
子供ながらにも「泥棒」が悪者である事は感じ取っていたし、自分の言う台詞もトンデモナイ台詞だと言う事も理解していた。しかし、練習して内容が頭に入ってくれば来るほどブレーメンの音楽隊が分からなくなっていた。
誰が悪役なのだろう?
最初に盗んだ食料を食べているのは泥棒だが、主人公達は泥棒を追い払った後、食料だけでなく家まで奪っている。
泥棒は被害者なのでは?けど最初に盗みをしていたのは泥棒で、だからって家まで奪われるのは可哀想なんじゃないだろうか?
そこで自分の台詞である。
「はっはっは、盗んだメシは美味い」
なんと物悲しい響き!
本番を迎える頃になると、この台詞に対する後ろめたさなんてものは感じなくなっていた。だから堂々と、胸を張って台詞が言える筈だったのだ。
極度の緊張感に襲われさえしなければ。




