美術室に1人
昼休みが始まった瞬間、ヘッドフォンをつけて音楽を聞きながら弁当を食べる。
食べ終えたら窓の外を眺めたりしながらのんびりと過ごし、予鈴が鳴ったらヘッドフォンを外して5時限目の準備をして、教室に戻って来たヨネゾーを目で確認する。
目が合っても無視。
何をどう思って友達だったのか分からない。
それよりも最大の謎は、タムに英文で書いた手紙を送ったのが俺であると知れ渡った後、ヒロとヨネゾーとタムとマッちゃんの4人が急速に仲良くなった事。
ヒソヒソとこっちに嫌な視線を向けてくる3人と、少し控えめなマッちゃん。
それでも美術部部長なので声をかけに行かなければならない。
「今日クラブあるから」
「……」
「クラブあるから来て」
「……」
「クラブやるから」
「……」
そして誰も来ない部活動。
手紙を書いたのは事実なのだから、さっさと謝ってしまえば良かったのだろうが、この頃の俺は人のせいにばかりしていて、謝る事が可笑しいとまで感じていた。
まず、伝えたかった言葉と英文にえげつない程の差があった事。
元はイジメてきたタムが悪いのだから、先に謝るのはタムからだ。との思い。
何故英語教師に告げ口を?
何故また3人で仲良くしてんの?
グルグルグルグル考えていると、ますます意固地になっていくもので、段々と本当に自分は可笑しな人間なのではないだろうか?と。
怒りでも、絶望でもなく、悲しさでも、楽しさでもなく、頭の中が沸騰したようにグッチャグチャになって、無性に暴れ出したい衝動に駆られた。
幸いな事に美術室には俺1人しかいないので、好き放題できた。
気分を落ち着かせる為に俺がとった行動は、美術室にある彫刻刀という彫刻刀を研ぐ事。
始めは切れ味の悪かった彫刻刀がサクッと削れるようになると、心までもがスッとしたのだ。
この癖は未だに続いていて、どうしようもなくなった時は包丁やらハサミを研いでしまう。




