軽い冗談
近くまで来たから。
とか言う理由でゲームセンター前のベンチに来た俺は、自動販売機で紅茶を買って座った。
飲み切るまでに誰も来なかったら帰ろう。
プシュッ
缶を開けて1口。
「よっ」
スグに声をかけてくれたのはシマ君さんだ。
「こんばんは」
挨拶を返して2口目。
自動販売機に向かったシマ君さんが紅茶を買って隣に戻ってきて、
プシュッ
ボンヤリと通り過ぎていく人の足元辺りを眺めながら無言。それでも特に居心地の悪さは感じない。
「ストレート?」
急に話しかけてきたシマ君さんは、俺が飲んでいた缶を指差している。
「はい。ミルクティーですね」
今度は俺がシマ君さんの缶を指差すと、
「なぁ、自分はミルクかレモンかストレートの中で、どれ?」
結構な声量でゲームセンターに来ていた人達に声をかけたシマ君さん。
ゲームセンターでは少し前からレモンティー派かミルクティー派かでなにやら争い?になっていたらしく、そこへ新しく吹いたストレート派の風。
しかし、統計の結果ストレート派は俺しかおらず、シマ君さんは笑いながら言った。
「ミルク派ちゃう奴は話しかけてくんなー」
と。
軽い冗談だとは分かっていても、異常に気になってしまった俺は、それ以降本当に話しかけずにいた。すると、話しかけるなと言った張本人が不機嫌になるという不思議。
あまりにも居た堪れなくなり、俺はゲームセンターからも距離を置く事にしたのだった。




