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SHORTで、俺。  作者: SIN
中学校 3年

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323/485

耳打ち

 中学2年の頃から不登校になっている生徒がいた。

 名前も顔も知らなかったのだが、3年でソイツと同じクラスになった。本当に1回も登校して来ない。テストだろうがなんだろうが1度もだ。

 しかし、ある日突然ソイツは登校してきた。特にイベントがある日という訳でもなく、至って普通の平日。

 「おまえ来たんかぁ~久しぶりー」

 何人かの生徒が声をかけ、ソイツも、

 「暇過ぎて来た~」

 と、笑いながら答えている。

 引き篭もり気味で登校していないと勝手に想像していた俺は、全く真逆のソイツに心の中でひそかに謝った。

 「俺、赤谷(仮名)よろしく」

 話しかけられたのは本当にスグの事、俺の前の席だったので始めて見る俺に自己紹介してくれたのだ。ならばこちらも名乗らなければならない。

 「木場です。よろしく」

 そこから何となく仲良くなり、一緒にカラオケに行ったりゲームセンターに行ったりした。そうなると極自然に疑問になる事が1つ。

 何故今まで登校して来なかったのか。不登校になる切欠はなんだったのか。

 赤谷はクラスメートの皆から「前園さん(仮名)の事が好きなんやろー」と、からかわれていた。しかし前園さんは男子から人気の高い女子で、2人共満更でもなさそうだった。だからそれが理由で不登校というのは不自然過ぎる。しかし、それ以外には理由が見当たらない。

 聞いても良いのか悩んだ俺は、結局聞く事にした。遠回しに聞けるほど器用ではないので、真正面から。

 「なんで今まで不登校やったん?」

 直接的過ぎる俺の質問に笑う赤谷は、少し考え込んでは首を捻り、また考えては唸りと、何かを確実に言おうとし始めた。

 黙って待つ事10分程度。

 ちょいちょいと手招きされて近付くと、耳元で

 「自分探しやっててん」

 と、言ってからの笑い声。

 「話しそらすなや」

 えー?と大袈裟に声を上げた赤谷は、また何か考えている仕草を繰り返すと、再びちょいちょいと手招きしてきた。

 「次、そらしたら罰ゲームな」

 「好きなん、前園さんちゃうねん」

 満更でもなさそうだったのに、どうやら違ったらしい。

 「そうなん?」

 「そっ。今はその人に会う為だけに学校行ってる」

 今はって事は、最初はやっぱり前園さんの事が好きだったのだろうか?

 他に好きな人……誰だろう?

 気になるけど、好きな人を聞き出せるほど仲良くも無いか。

 「学校には勉強するために行こうや」

 そう言って笑い合った後、コソッと耳元で大変な事を打ち明けられてしまった。

 好きな人の名前を告げられてしまったのだ。

 だけど、それは到底応援出来る人物ではなかったので、俺はそのまま何も言えなくなってしまったのだった。

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