カルーアミルク
バンド活動はしなくなっていたにもかかわらず、俺とカズマはお互いをあだ名で呼び合っていた。
時々カズマの家に行って遊んでいたので「おいで」と言われれば何の迷いもなくお邪魔しに行っていた。
そんなある日の事、カズマが意中の相手であるキユウに1つの願い事をした。
付き合ってくれ、とかそういうのではなく、本格的にピアノを教えて欲しいというものだった。
キユウは合唱団出身で、この頃には既にピアノの免許か何かを持っていたらしく、幼稚園の先生にならなれる、と本人から聞いた事がある。
「良いけど、2人きりは嫌やから友達1人連れてく」
「じゃあ俺はミスギ呼ぶわ」
という流れで放課後にカズマの家に行く事になった。しかし俺には美術部があるので遅くなると言った訳だが、どうしてもと頼まれたのでそのまま向かった。
こうしてカズマの部屋に入り、早速始まるピアノレッスン。1時間ほど続き、カズマは一旦トイレ休憩に行った。そして戻って来ると人数分の飲み物を用意していた。
ただの飲み物ではない。
牛乳で割るとアイスコーヒーの味になるというアルコール度数の高い飲み物だ。
ゴクゴク。
かなり甘かったが普通に飲めた俺とキユウの友達に対し、カズマとキユウは結構とんでもない事になった。
キユウは彼氏の浮気癖を嘆き悲しみ号泣し、カズマはそんなキユウを抱き締めて離さない。
「なんでアイツばっかりモテんねん」
深刻そうに呟くカズマの言葉に、
「だって格好えぇねんもん」
と、泣きながら答えるキユウ。
非常に悪いと思いつつ、俺は込み上げて来る笑いを抑える事は、出来なかった。




